ID番号 | : | 01166 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令一部取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 名古屋放送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働組合員に対する賃金改定時期を非組合員のそれより遅らせたことは不当労働行為であるとの命令の取消を求めた行政訴訟事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条,3章 労働組合法7条,27条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 賃金の計算方法 |
裁判年月日 | : | 1980年5月28日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (行コ) 26 |
裁判結果 | : | 取消 認容(確定) |
出典 | : | 労働民例集31巻3号631頁/時報975号120頁/タイムズ427号109頁/労経速報1059号3頁/労働判例343号32頁 |
審級関係 | : | 一審/名古屋地/昭53. 8.25/昭和51年(行ウ)36号 |
評釈論文 | : | 奥山明良・ジュリスト736号142頁 |
判決理由 | : | 控訴会社と参加組合との間には右両年度において五月に妥結を見た賃金改定に関し、妥結月実施の労働協約は成立しなかったし、妥結月実施の労使慣行も存しないものと認めるべきであるが、同時にまた、これを四月に遡って実施する旨の合意も労使慣行もなかったものと認めるべきである。 参加組合はこのような場合賃金改定の実施時期については個別的労働契約によるべきであって、控訴会社の社員就業規則五〇条の「社員の給与については、別に定める給与規則による。」旨の規定及びこれを受けた給与規則六条の「昇給は原則として毎年四月に行う。」旨の規定の適用により、賃金改訂は四月一日から実施されるべきであると主張する。 しかし、まず右の給与規則六条にいう「昇給」とは定期昇給のみを意味するものと解するのが相当であって、右の文言が賃上げをも含むと解釈するのは文理上困難であるといわざるをえない。のみならず、《証拠略》を総合すると、控訴会社は、参加組合結成前の昭和三七、三八年度においては一方的に四月から賃上げを実施したが、参加組合が結成された昭和三九年以降同四八年までの間は、参加組合との間の労働協約で合意された額によって、合意された時期(四月一日ないし六月一日)から賃上げを実施して来たこと、及び右のすべての年度を通じて、定期昇給と賃上げは同時に行われており、各年度共に年令給については、一律に基準額を増額(賃上げ分)した上、各従業員につき一律に一才分を加算し(定昇分)、職能給については各職級毎に一律増額(賃上げ分)と査定分(定昇分)とを定めるという方式によっていたこと、が認められる。右の事実によれば、控訴会社においては、定期昇給と賃金改定とはその実施時期を含めて参加組合との間に成立した労働協約によって定められてきたものであるから、この場合には協約が前記給与規則の規定に優先して適用されるというべきであり、他方、未だ何らの協約の成立していない本件両年度の四月分の賃金について直ちに右の規定が適用される余地もないというべきである。改定されるべき賃金の額が未定である以上、右の規定が働く余地はなく、この場合には、新しい協約が成立するまでの間は、前年度の協約を適用する他はないといわねばならない。 |