全 情 報

ID番号 01176
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 阪本紡績事件
争点
事案概要  無断欠勤につき会社により謝罪を求められたが拒否したために就労を拒否された従業員が、右拒否は出勤停止処分に当るのに懲戒手続を踏んでおらず、また就業規則の定めに反し無期限のものであり無効である等として、右処分中の賃金の支払を求めた事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法24条
民法413条,536条2項
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
裁判年月日 1984年12月26日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ワ) 6287 
裁判結果 認容
出典 労働判例445号15頁/労経速報1218号15頁
審級関係
評釈論文
判決理由  ところで、使用者は、経営秩序や職務規律に違反した労働者に対し、自己反省をなさしめたり謝罪を求めたりすることも相当な措置としてなしうること前記のとおりである。しかし、これも無制限に許されるものではなく、これに応じないことをもって、当該労働者の就労を拒否することは原則として許されないものといわねばならない。なぜなら、自己反省や謝罪はそれ自体、本人の意思に基づくほかない行為であって、個人の意思の自由を尊重する現行法の精神からいって、自己反省や謝罪に応じない者に対し、その就労を拒否することは、これを間接的に強制する結果となるからである。
 しかるところ、前掲2(二)記載のとおり、前記期間の原告の就労不能は、更生会社が、原告が本件欠勤問題について謝罪の意を表しないことを理由に就労を拒否したためであり、そして、本件全証拠によるも、更生会社が就労を拒否してまで原告に例え一言にしても謝罪の意を表することを求めねばならない合理的理由も何ら見い出し得ず、そうすると、右就労拒否をもって更生会社のやむを得ない処置とし、その責に帰すべからざるものとして賃金債務を免れるものとすることはできないこと明らかである。