全 情 報

ID番号 01182
事件名 時間外手当支払仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本工業検査事件
争点
事案概要  地方現場に出張して作業に従事する従業員らが、右出張作業の際の時間外労働に対する割増賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容)
参照法条 労働基準法32条
労働基準法施行規則22条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間の概念 / 出張の往復時間
労働時間(民事) / 事業場外労働
裁判年月日 1974年1月26日
裁判所名 横浜地川崎支
裁判形式 決定
事件番号 昭和48年 (ヨ) 142 
昭和48年 (ヨ) 174 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労働民例集25巻1・2合併号12頁
審級関係
評釈論文 松岡三郎・労働法学研究会報1048号1頁/渡辺章・ジュリスト588号103頁
判決理由  〔労働時間―労働時間の概念―出張の往復時間〕
 出張の際の往復に要する時間は、労働者が日常の出勤に費す時間と同一性質であると考えられるから、右所要時間は労働時間に算入されず、したがってまた時間外労働の問題は起り得ないと解するのが相当である。
 〔労働時間―事業場外労働〕
 右に認定した債務者従業員の通常の場合と地方現場へ出張する場合の作業形態の比較、出張作業の実施状況、出張従業員の人数、出張期間、出張従業員中に責任者を指定する点、債務者が出張従業員から労働時間関係事項を記載した作業報告書を提出させている点等から判断すれば、債務者従業員の出張作業は拘束性を有し、右出張作業が、拘束性のない所謂出張を規定していると解される労働基準法施行規則第二二条所定の労働時間を算定し難い場合に該当するとは考えられない。したがって、前記本件出張作業が右法条に該当するという債務者の主張は理由がない。
 (2)右見解にしたがえば、債務者は、債務者従業員が地方現場へ出張して所定の作業に従事し時間外労働を行った場合、これに対し労働基準法第三七条に則り、所定の割増賃金を支払うべき義務があるというほかない。
 (三)もっとも、債務者は、地方現場への出張従業員から提出される作業報告書の労働時間関係欄の記載事項は信用できずしたがって、債務者において出張従業員の実労働時間を算定することは困難である旨主張する。しかしながら前記規則第二二条所定の労働時間を算定し難い場合に当るか否かは債務者も自陳するとおり客観的に決せられるものであり信用者である債務者が、前記作業報告書の当該記載事項を信用するか否かとは別異の問題であるというべきである。