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ID番号 01197
事件名 権利確認請求事件
いわゆる事件名 国労静岡地本沼津支部事件
争点
事案概要  指導員としての地位にある電気機関士、電車運転士らが、争議時の業務命令に従わなかったこと等を理由として、指導担務を免じられたので、指導員たる地位に基づく労働契約上の権利の確認を請求した事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法32条の3
体系項目 労働時間(民事) / 変形労働時間 / 一カ月以内の変形労働時間
裁判年月日 1972年7月15日
裁判所名 静岡地沼津支
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (ワ) 123 
裁判結果 棄却
出典 時報685号128頁/タイムズ282号128頁
審級関係
評釈論文 近藤昭雄・労働判例159号6頁/須田四郎・公企労研究12号79頁/林昭・地方公務員月報113号43頁
判決理由  労基法第三二条第二項が就業規則において右の特定をなすことを要求している目的は、超過労働の日又は週を予め確定しておき、以て使用者の恣意を抑制し労働者の利益を守ることにあると考えられる。
 そうであるとすれば就業規則において変形八時間制を採用する旨の原則が掲げられている限り、就業規則自体において右の特定が行なわれていなくとも、それに代わるべきものにおいて右の特定が行なわれ、それによっても前記目的の達成に支障がなく且つ企業の実情からして就業規則自体における特定を要求することが極めて困難と認められる場合においては就業規則自体において右特定が行なわれていないことを以て直ちに労基法三二条二項に違反するものというべきではあるまい。
 これを本件についてみるに、国鉄においては前述のように就業規則第一四条第一項において変形八時間制を採ることが明記され、第一五条第一項において一日八時間又は一週四八時間を超えて労働する日又は週を特定する権限を鉄道管理局長に委ね、鉄道管理局長がこの権限に基づいて作成した勤務割において右の特定が行なわれているのであるから勤務割は少なくとも勤務時間に関する限り就業規則に代わるべきものと認められ、国鉄の如く複雑多岐にわたる企業において右の特定を就業規則において行なうことは極めて困難であると認められる上に、証人Aの証言からも窺われるように勤務割の制度は労働慣行として国鉄労使間に既に定着しており、右制度によって使用者の恣意を抑制し労働者の利益を守るのに何等支障はないものと認められるから右のような特定の仕方は労基法第三二条第二項に違反するものではないと解すべきである。