ID番号 | : | 01198 |
事件名 | : | 賃金支払仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 関西弘済整備事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 午前八時三〇分から翌日同時刻までの一昼夜交替勤務の従業員らが、その稼働時間のうち午後六時から翌朝八時三〇分までについて時間外労働手当の、午後一〇時から午前五時までについて深夜労働手当の支払の仮処分を申請した事例。(申請却下) |
参照法条 | : | 労働基準法32条1項,89条,90条,106条1項 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 変形労働時間 / 一カ月以内の変形労働時間 就業規則(民事) / 意見聴取 就業規則(民事) / 就業規則の届出 就業規則(民事) / 就業規則の周知 |
裁判年月日 | : | 1976年9月6日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ヨ) 140 |
裁判結果 | : | 却下(確定) |
出典 | : | 労働民例集27巻5号455頁/時報847号92頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間―変形労働時間―一カ月以内の変形労働時間〕 債権者らの勤務形態である一昼夜交替勤務は、二四時間の間に勤務駅により異るが、午前一時から午前六時までの間に四時間の仮眠休憩時間と数回に分けて合計四時間の休憩時間があって、実労働時間が一六時間となっていること、昭和三九年七月一日作成、昭和四五年八月二〇日変更の債務者臨時傭員雇傭規則は、現場勤務者の勤務時間について、一日実労働時間を八時間とし、但書として業務上必要ある場合は四週間を平均して一週間の実労働時間四八時間を超えない場合に限り、特定の日に八時間を超えまたは特定の週に四八時間を超えて勤務させることがあると規定していること、さらに同日作成の債務者社員就業規則末尾添付の細則には、右就業規則および臨時傭員雇傭規則をうけて、債務者三宮営業所に勤務する臨時傭員を含む従業員の勤務時間について、一昼夜交替勤務者は駅舎、気動車、客車の清掃業務に従事し、勤務時間は午前八時半から翌日午前八時半まで、その間休憩時間として午後〇時から同一時まで、午後三時から同四〇分まで、午後五時から同五〇分まで、午後八時から同三〇分まで、午前六時五〇分から同七時五〇分まで合計四時間、この外午前〇時から同四時までの夜間休憩時間を規定していること、さらに昭和五一年四月一日作成の臨時雇員就業規則には、一交勤務と称して始業から終業まで二四時間内に実働一六時間、休憩休養各四時間等を明確にした規定をしていることがそれぞれ認められる。 ところで労基法三二条一項によると、労働時間を一日八時間、一週四八時間を原則としているが、同条二項において例外として、就業規則に四週間を平均して一週四八時間の労働時間とする旨規定した場合に、特定日に八時間を超え、特定の週に四八時間を超える労働をさせるいわゆる変形労働時間制を認めている。債務者が採用している一昼夜交替勤務は右変形労働時間制であって、就業規則にあたる臨時傭員雇傭規則と細則とを合せると、これを明記していること、細則で定める休憩時間帯と実際の休憩時間帯が若干異っているが合計時間はいずれも同じであり、最近作成の就業規則にもこれを明記されていて一応時間外労働とはならないものと考えられる。 (中 略) もっとも債権者らは、債務者が定めている休憩時間がいわゆる手待時間であり、夜間休憩(仮眠)時間も拘束時間で、いずれも労働時間であるという。手待時間というのは、次の仕事に就くまで待機している時間で、仕事から離脱した状態にないから、労働から離れることが保障されている休憩時間と異り、単に外形からでなくその職場の実態から判断しなければならない。債権者らが、休憩時間中に職場を離れたことをとがめられたこと、あるいは列車の遅延のため作業ダイヤが変り休憩時間にくいこんで仕事をした場合、代りの休憩時間が与えられなかったことなどを具体的に特定して疎明すべきであり、これらを手待時間であると認めるに足りる疎明が十分でなく、逆に休憩時間として一昼夜に合計八時間付与されているとする疎明資料も多くあり、たやすく債権者らの主張を認めることができない。 〔就業規則―意聴取〕 なお最近作成の臨時雇員就業規則に関しては、債権者らは、その内容を債務者から知らされており、ただ適用労働者側の意見聴取手続がなされていないというが、この手続の欠如についても、その効力要件でないことは、その法的性格からも明らかで、この点債権者の主張は理由がない。 〔就業規則―就業規則の届出〕 債権者らは、債務者作成の臨時傭員雇傭規則が、労基監督署に届出がなく、しかも臨時傭員に周知されていない旨主張する。なるほど右規則は臨時傭員に対する就業規則であり、これが管轄労基監督署に届出がなされた疎明資料がない。しかし前記社員就業規則末尾に添付されている細則は、右就業規則と共に昭和三九年一〇月二九日神戸東労基監督署に届け出ている。従って勤務形態の基礎となるものについて届出がなく、具体的に規定した細則につき届出があるという中途半端なものとなっている。だが就業規則は、使用者が一方的に制定するものであり、一旦定められた以上企業内における一種の法規範として、労使双方が拘束されるものであることは労基法の諸規定から明らかであって、かかる性格からみて、労基監督署への届出要求は、単なる取締規定として設けられたものであり、届出がなくても規則の効力に影響がないものと解すべきである。従って本件においても、雇傭規則の届出がないこと自体は問題とならない。 〔就業規則―就業規則の周知〕 また周知について、債務者が右規則に関し労基法一〇六条一項所定の周知義務をつくしたと認めうる疎明資料はない。しかしながら債務者は、臨時傭員と労働契約の締結の都度、右規則に定める条件で就業する旨の書面を作成せしめるようにしていたこと、債権者らが採用された際の労働契約書の提出はないが、採用の際に営業所長等から規則や細則記載の勤務時間等について十分説明をうけていたことが疎明されているので、実質的にはこのような周知方法がなされていたということができる。ところで前記就業規則の性格からみて、周知することが効力要件と解すべきであるが、労基法一〇六条一項所定の方法でなくても、右程度の周知方法でも差支えないものと解せられる。 |