ID番号 | : | 01204 |
事件名 | : | 時間外労働協定効力停止等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 全逓浜松郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 全逓支部組合員らが、全郵政支部と浜松郵便局長との間で締結された、時間外労働及び休日労働に関する協定に基づいて、国は時間外労働を命じてはならない旨の仮処分を申請した事例。(申請認容) |
参照法条 | : | 労働基準法36条 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の要件 労働時間(民事) / 三六協定 / 締結当事者 |
裁判年月日 | : | 1973年1月6日 |
裁判所名 | : | 静岡地浜松支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 107 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 訟務月報19巻3号1頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働時間―時間外・休日労働―時間外・休日労働の要件〕 労働者の時間外労働の法的義務の成立根拠いかんの問題にかんしては、使用者側からの申込に対し、その都度の個々の労働者の自由な意思により個別的な合意を必要とするという見解があり、それは八時間労働制を中心とする労働時間の制限が労基法の保証する労働者の基本的権利であることに鑑みれば相当の合理的根拠をもつ見解といえよう。しかし三六協定にもとづいて使用者が労働者に対し発する時間外労働命令は使用者とその労働者の所属する労働組合との間に超過労働義務に関する協約が締結されているか、或は就業規則が存し、更にあらためて三六協約が締結された場合になされるものである限り、その労働者を拘束し、時間外労働をなすべき義務を発生せしめるとの見解も一方において有力であって、現に申請人らの使用者である被申請人においてかかる見解のもとに時間外労働命令を発していることが、その主張ならびに疎明から明らかな以上、その根拠となる三六協定が有効な場合の時間外労働命令の効力については、上記いずれの見解をとるかによって結論を異にするが、右三六協定が無効であるときは、いずれの見解をとるにせよ労働者は時間外労働命令にもとづく義務の不存在を主張して既に発せられて現に存在する時間外労働命令の効力を争うことができるだけでなく、将来発せられる虞れのある時間外労働命令を予防するため、使用者に対し不作為を求める一種の妨害予防請求権を有するというべきである。 〔労働時間―三六協定―締結当事者〕 一般的に言えば、労基法三六条は、当事者資格の確定の基準時期方法について何らの規定をも設けていないから、その確定は通常の法律解釈に従い、原則として協定締結時を基準とすべきものと解する。もっとも、関係当事者(本件にあっては三者)が確定の基準時について別段の合意をした場合、または合意に至らなくても組合側(本件にあっては前記両組合)が使用者側の基準時の通告に異議を述べることなく、積極的に確定のための手続に参加する如き場合には、基準時と締結時との間に極端に長い時間的な間隔があるため、労働者の意思にそごを来たし、その意思を正確に反映できない著しい危険がない限り、例外的に締結時以外の右の基準時によって協定締結の当事者資格を確定することもでき、この場合には基準時後締結までの間の組合員数の変動によって協定の効力は左右されないというべきである。 (中 略) ところで本件においては、協定締結に至る過程において締結時と別個の基準時を設けることについての三者間の合意が存在したこと、或は局側の基準時設定に対する組合側の明示ないし黙示の了解が存在したことのいずれもこれを認めるに足りる疎明はない。 (中 略) そうだとすれば、組合側の協定締結資格は、本件協定の締結時、すなわち一一月一日午後五時五二分ころの時点における所属組合員数を基準として決定されるべきものと思料するほかはない。 (中 略) 右のとおり、局側が本件協定締結に際し、全郵政支部所属の組合員と認めた者のうち四名について、当時同支部に所属していた事実が認められない以上、前記Aの所属組合について判断するまでもなく本件協定締結時の全郵政支部所属の組合員数は相対過半数に達していなかったことになり、したがって本件協定は使用者である局側が締結資格を有しない組合を相手方当事者として締結したことになるから無効であるといわざるを得ない。 |