ID番号 | : | 01206 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 北九州市交通局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 市交通局がなした懲戒処分を不当労働行為と認定し右処分の取消等を命じた命令につき、右処分の理由とした超勤拒否闘争及び一斉休暇闘争は違法なものであるとして、取消を求めた行政訴訟事件。(命令取消、原判決取消) |
参照法条 | : | 労働基準法36条,39条4項 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加 |
裁判年月日 | : | 1980年10月22日 |
裁判所名 | : | 福岡高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (行コ) 18 |
裁判結果 | : | 取消(上告) |
出典 | : | 労働民例集31巻5号1033頁 |
審級関係 | : | 一審/福岡地/昭52.11.18/昭和47年(行ウ)15号 |
評釈論文 | : | 玉木純雄・地方公務員月報214号66頁/渡辺章・公務員判例百選〔別冊ジュリスト88号〕172頁 |
判決理由 | : | 〔労働時間―時間外・休日労働―時間外・休日労働の義務〕 参加人の本件超勤拒否すなわち三六協定の締結ないし更新拒否が地公労法第一一条一項の争議行為になるか否かにつき考える。超過勤務に関する三六協定を締結するか否かは、原則として、労働組合ないし労働者の自由に属するところであるから、労働組合が超過勤務自体の労働条件に関する労使間の意見不一致のため、同協定の締結ないしは更新を拒否したとしても、これをもって直ちに違法とすることはできないことはいうまでもないところである。しかし、労働組合が、当該事業の運営が超過勤務に依存すること、すなわち、超過勤務の正当性を是認しながら、超過勤務に関する労働条件そのものではなく、労使間の他の紛争についての自己の要求を貫徹する手段として三六協定の締結ないし更新を拒否し、超勤を拒否することは、争議行為(同盟罷業)に該当するものと解するのが相当であるところ、参加人が本件三六協定の締結ないし更新を拒否し、組合員の超勤を拒否させるに至った経緯並びにその態様はさきに認定したとおりであって、同事実からすると、控訴人の交通事業におけるバスの平常の運行ダイヤは、参加人も加わったダイヤ編成審議会の審議を経て定められたものであり、一日九勤務が超勤ダイヤとして編成されていて超勤が恒常化され、超勤の拒否があれば平常のダイヤ運行に支障を来たす状況にあったところ、参加人の前記三六協定の締結ないし更新拒否による超勤拒否闘争は、超勤の恒常化(正当性)を認めながら、控訴人の財政再建計画に関する参加人の要求を貫徹するための手段としていたものであり、かつ、控訴人の交通業務の正常な運営を阻害するためにしたものであって、地公労法一一条一項の禁止する争議行為に該当するものといわざるをえない。 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―一斉休暇闘争〕 年次休暇の権利は、労働基準法第三九条一、二項の要件を充足することによって、法律上当然に労働者に生ずる権利であって、年次休暇の利用目的は、労働基準法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、労働者の自由であり、本来使用者の干渉を許さないものである。しかし、いわゆる一斉休暇闘争は、労働者がその所属事業所において、その業務の正常な運営の阻害を目的として、組合等の指令により全員一斉に休暇届を提出して職場を放棄・離脱するものであって、その実質は年次休暇に名をかりた同盟罷業にほかならない。したがって、その形式いかんにかかわらず、本来の年次休暇権行使ではないのであるから、これに対する使用者の時季変更権の行使もありえないものである(最高裁判所昭和四八年三月二日第二小法廷判決・民集二七巻二号二一〇頁参照)。ところで、本件における休暇闘争は、さきに認定したように、参加人の指令に基づき、組合員である職員が全員一斉に休暇届を出すことによって職場を離脱し、控訴人の業務の正常な運営の阻害を狙ったものであって、一種の同盟罷業ということができ、地公労法第一一条一項により禁止された争議行為に該当するものというべきである。 |