ID番号 | : | 01208 |
事件名 | : | 時間外勤務手当請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 静岡県教職員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 条例で定める勤務時間を超えて教職員会議に出席した原告らが、校長命令により時間外勤務をさせられたとして超過勤務手当の支払を請求した事例。(一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法36条,37条,115条 地方公務員法58条3項 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効 賃金(民事) / 割増賃金 / 違法な時間外労働と割増賃金 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務 雑則(民事) / 時効 |
裁判年月日 | : | 1965年12月21日 |
裁判所名 | : | 静岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (行) 4 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | 行裁例集16巻12号2044頁/時報434号14頁/タイムズ187号136頁/教職員人事関係裁判例集4号235頁 |
審級関係 | : | 上告審/01260/最高一小/昭47. 4. 6/昭和44年(行ツ)26号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金の支払い原則―賃金請求権と時効〕 〔雑則―時効〕 前記のように、地方公務員法第五八条第二項によれば、原告ら教職員を含む一般職の地方公務員に対し適用除外をしている規定を除いては労働基準法が原則として適用されるものと解されるから、賃金等の時効に関する同法第一一五条もまた、原告らに対し適用されるものというべきところ、原告らが本訴で請求する時間外勤務手当は労働の対価として支払われるべきものであるから同法第一一条によって賃金に該当し、同法第一一五条により二年間これを行わないときは時効により消滅するものと解するのが相当である。なお、地方自治法第二三三条には「普通地方公共団体の支払金の時効については、政府の支払金の時効による。」とあり、会計法第三〇条は「金銭の給付を目的とする国の権利で、時効に関し他の法律に規定がないものは、五年間これを行わないときは時効により消滅する。国に対する権利で金銭の給付を目的とするものについても、また同様とする。」と規定されているけれども、右法条にいう「他の法律」とは、私法、公法を問わず会計法以外の他の一切の法律を指し、時効に関し他の法律に規定のある場合には、同法条の適用を排除するものであるから、本件のように労働基準法の時効に関する規定の適用があるとされる場合は、右会計法規の適用が排除されるものといわなければならない。 〔賃金―割増賃金―違法な時間外労働と割増賃金〕 原告ら地方公務員についてもその時間外勤務手当の基準法として適用のある労働基準法第三七条の規定は、使用者が同法第三三条もしくは同法第三六条の規定によって労働者に時間外勤務をさせた場合、通常賃金の二割五分増しの賃金を支払うべきことを定めたものであって、右規定によらない違法な時間外勤務に対しては割増賃金の支払義務がないものと解すべき余地もないではないが、同法条の立法趣旨が使用者に対し時間外労働に対する割増賃金の支払を強制することによって間接に労働者に対する一日八時間、週四八時間の労働時間制が守られることを保証する点にあることを考えるならば、かような違法な時間外勤務に対してはなお一層強い理由で時間外勤務手当の請求権が認められなければならないものと解するのが相当であり、この理は静岡県における前記「給与条例」第一五条の解釈についてもおし及ぼされるべきもので、そう解しても何ら教育公務員の労働の特殊性に背反するものではないというべきである。 〔賃金―割増賃金―支払い義務〕 戦後労働基準法が制定され労働者の労働時間は一日八時間、一週四八時間が原則とされ、例外的に認められる時間外労働に対しては賃金の二割五分以上の率で計算した割増賃金の支払義務が使用者に強制されるにいたり、原告ら地方公務員についても右規定の適用を受けるものとされているのであるから、時間外勤務手当を支払うかどうかは公の秩序に関する事項であって、当事者の任意処分を許されない領域に属するものというべく、したがって、かりに前記認定の事実をもって被告主張の如き慣習ある場合にあたるとしても、その効力を有せざるものというほかはない。 |