ID番号 | : | 01223 |
事件名 | : | 行政処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 広島西郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 法内超勤命令を拒否したこと等を理由とする郵政職員に対する免職処分の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法36条 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 時間外・休日労働 / 時間外・休日労働の義務 |
裁判年月日 | : | 1973年7月20日 |
裁判所名 | : | 広島高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (行コ) 7 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 訟務月報20巻2号60頁 |
審級関係 | : | 一審/04198/広島地/昭45. 7.21/昭和43年(行ウ)32号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | ところで使用者が労働者に対し労基法所定の規制労働時間を超える超過勤務を求めても処罰されないという刑事免責を受けるためには同法三六条所定のいわゆる三六協定の存在を要することはいうまでもないが、同協定の存在を前提とした使用者の超勤命令により直ちに労働者に超勤義務が生ずるかどうかは一個の問題である。しかし少なくとも使用者が超勤を命じた勤務時間がそれに正規の勤務時間を加えても労基法所定の規制労働時間の枠内である場合には、もともと三六協定を要せず就業規則、労働契約において正規の労働時間と定めることも可能であったのであるから、その場合就業規則に超勤を命じ得る旨の定めがあり、それが労働者の集団意思の反映としての労働協約に反するものでなく、しかも個々の労働者が就業規則の定めと異なる労働契約を締結していない以上、就業規則の規範的効力から超勤命令は拘束力を生じ、これを受けた労働者は超勤命令に応じた就業義務を負うものと解するのが相当である。 これを本件についていえば、被控訴人の正規の勤務時間は四週間を平均して一週間の勤務時間が四八時間を超えないから、就業規則の定めにより一日の勤務時間が八時間を超えることも許される範囲内にあり、しかも被控訴人が拒否した超勤時間を加えても一週間の勤務時間は四八時間以下であるところ、(証拠省略)及び弁論の全趣旨によると、郵政省就業規則では三六協定の締結されているときはその定めるところにより時間外勤務を命じ得るものと定めていること(同規則六六条)、他方被控訴人が超勤を拒否した当時被控訴人の所属していた全逓芸広支部の支部長と控訴人との間で、一定のやむを得ない事由、すなわち郵便業務がふくそうして利用者に不便を与えると認められるとき、人員の繰り合せ上必要やむを得ないとき等には控訴人において所属職員に対し被控訴人が超勤命令を受けた程度の超勤はこれを行なわせることができる旨の三六協定(厳密にいえば労基法所定の規制労働時間を超えない範囲に関するものは三六協定には当らない)が締結されていること、また郵政省と全逓との間では郵政省はやむを得ない事由がある場合(その具体的な事由は右三六協定と同様)原則として四時間前に本人に通知することにより職員に時間外労働をさせることができる等と規定した「時間外労働および休日労働に関する協約」(昭和三四年一二月二一日締結)が締結され制限的ながら超勤を許容する態度をとっていることが認められるし、さらに被控訴人が右就業規則の定めと異なる労働条件で採用されたものと認め得る証拠はないから、控訴人が右就業規則、三六協定の定めるところにより超勤を命じた以上被控訴人はこれに応ずる超勤義務を負うものというべきである。 |