全 情 報

ID番号 01255
事件名 時間外および深夜割増賃金請求事件
いわゆる事件名 朝日タクシー事件
争点
事案概要  組合との間の基本給協定によれば、基本給には時間外および深夜割増賃金も含まれているとしてその支払を受けなかったタクシー運転手が、右協定は労働基準法三七条等に違反し無効であるとして時間外および深夜割増賃金の支払を求めた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法37条
体系項目 賃金(民事) / 割増賃金 / 割増賃金の算定方法
裁判年月日 1970年2月20日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ワ) 871 
昭和39年 (ワ) 872 
裁判結果
出典 労働民例集21巻1号218頁/タイムズ246号185頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働基準法第三七条等の趣旨が、所定の割増賃金を確実に支払うことを使用者に義務づけることにより、超過労働をできるだけ制限すると共に、量的または質的に過重な労働に対する補償を十分なさしめようとする点にあることからすれば、労働基準法は右割増賃金が法所定の手続で厳格にかつ機械的に算定されることを期待しているものと考えられる。しかしながら、本件におけるように労使が協議の上時間外、深夜賃金を含む基本給を自主的に協定した場合、その合意そのものは可及的に尊重すべきものと考えられるから、それが過去の時間外および深夜労働賃金の支給実績などに照して従業員に実質的に不利益を及ぼすものでない限り、右合意をもって直ちに違法、無効なものと考えるのは相当でない。そして、本件の場合原告らの基本給が当初原告らに有利なものとして取決められたことは前記認定のとおりであり、その後に前記のような賃金支払方法のため原告らが特に不利益を蒙ったことを肯認するに足りる証拠も存しないので、前記基本給の取り決めが賃金支払方法として妥当なものでないこと(前記のような基本給が定められた場合時間外、深夜労働時間ならびにこれに対する賃金額は毎月変動するわけであるから、これに応じて基準賃金部分も増減することとなり、純然たる歩合給の場合と同様に、不安定な賃金体系となることは否定できない)は否定し難いとしても、右合意そのものを違法視することはできないものと考える。