ID番号 | : | 01267 |
事件名 | : | 宿日直勤務手当金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 大阪市学校校務員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 宿日直勤務に対する割増賃金の支払を求めた事例。(認容) |
参照法条 | : | 労働基準法32条,37条,41条3号 |
体系項目 | : | 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 監視・断続労働 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 宿日直 |
裁判年月日 | : | 1979年4月23日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (行ウ) 99 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例322号83頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 手塚和彰・ジュリスト720号164頁 |
判決理由 | : | 〔労働時間―労働時間・休憩・休日の適用除外―監視・断続労働〕 法第四一条第三号は法第四章及び第六章の労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用を除外するにあたり、当該労働が単に監視または断続的労働であるとの実体的要件のみならず行政官庁の許可を形式的要件としているのである。すなわち、法は届け出や行政官庁の認定(たとえば第一九条第二項等)と行政法上一般的禁止の解除を意味する許可とを用語上区別したうえで、法第四一条第三号においては許可を要件としていること、同条第三号は、監視または断続的労働という労働密度の稀薄な特殊な労働につきその特質に相応した規制をするため、形式的な労働時間や休憩及び休日に関する制限をとり除きはするものの、実質的に法第四章及び第六章の規定する労働時間、休憩及び休日に関する規定の趣旨を生かし、それを確保し、もって労働者を保護するとの労働基準法の目的を達成するため右制限の除去を行政官庁の許可にかからしめたものであり、これを詳論するならば、監視または断続的労働といっても千差万別であるため同条第三号の許可を付し得る労働か否かにつき実態調査をし、実状を十分把握したうえで許可・不許可を決する必要があり、また、許可するに際しても全面的かつ画一的に第四章及び第六章の労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用・不適用を決するのではなく、当該許可に附款を付することによって労働の実態に即応した労働時間、休憩及び休日に関する規制をなし、もって労働者の保護に十全を期することとしたのであり、単に監視または断続的労働であるか否かを認定すれば足りるというものではないこと、さらには、行政官庁は一般に許可制度を通じて社会情勢に即応した労働行政目的を実現すべき責務を負っているものということができるところ、労働者の労働時間、休憩及び休日に対する行政官庁の監督的機能の実効性を十分に担保することからも、法第四一条第三号の許可は文字どおり一般的禁止を特定の場合(本件では監視または断続的労働の場合)に特定人に解除するとの意味の許可と解さなければならないのである。 そこで、法第四一条第三号所定の許可の意義を右のように解した場合、法は前記実体的、形式的二要件を法第四章及び第六章で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定の適用除外の要件としているところ、監視または断続的労働に従事する者について、同条の許可を受けないで法第四章及び第六章で定める労働時間、休憩及び休日に関する規定に反する労働に従事させた場合には、右労働が実体的要件を充足するものであったとしても形式的要件を充足していないために右規定の適用を除外される旨主張し得ないものと解するのが相当である。これは、前記説示のごとく規則第二三条が法第四一条第三号の解釈規定であり、同条の許可と二三条許可とは同一のものと解すべきであるから、二三条許可を受けていない場合にも右と同様に規則第二三条の適用を主張し得ず、法の原則にもとるものと解さねばならない。 〔労働時間―労働時間・休憩・休日の適用除外―宿日直〕 労働基準法第四一条第三号は、労働密度が特に稀薄で、身体または精神緊張が比較的少なく、労働若しくは業務が間歇的であるため、労働時間中においても手待ち時間が多く実作業時間が少ない労働に従事する労働者について、その労働の特殊性の故に労働時間、休憩及び休日に関する厳格な法の規定を等しく適用することがかえって他の労働の規制と実質的均衡を失する結果になる場合において、法定の厳格な制限を加えることなく所轄行政官庁の規制にゆだねることによって当該労働者の保護に欠けることがないようにするとの趣旨のもとに規定されたものであり、右立法趣旨からすれば、法第四一条第三号は、その規制対象を断続的労働を本務とする者に限定していると解すべきではなく、他の業務に従事する者がその本務以外にこれに附随して宿日直勤務に従事する場合においても、本務とこれに附随する宿日直勤務を合わせ一体として考察し、労働密度の点から過度の労働に至らず、労働時間、休憩及び休日に関する法的規制を宿日直勤務に関する限り除外しても労働者の保護に欠けるところがないと認められる場合をも包摂する趣旨の規定と解するのが相当であって、規則第二三条は、右のような労働内容をもつ宿日直勤務という断続的業務について法第四一条第三号の適用のあることを示す、いわば同法条の特殊な場合の解釈規定と解すべきである。 |