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ID番号 01290
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 熊本県教職員組合事件
争点
事案概要  宿日直勤務拒否闘争をなした教職員組合の役員が地公法三七条に違反するとしなされた懲戒処分の無効確認を求めた事例。
参照法条 労働基準法32条1項
地方公務員法37条
体系項目 労働時間(民事) / 労働時間・休憩・休日の適用除外 / 宿日直
裁判年月日 1962年4月3日
裁判所名 熊本地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 21 
裁判結果
出典 行裁例集13巻4号709頁/教職人事関係裁判例集2号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由  次に、原告等は教員に対して宿日直勤務を命ずることは、労働基準法第三十二条に違反するから許されないと主張するので、更にこの点につき考えてみる。同法第四十一条第三号は右第三十二条の例外規定であるが、同号にいう監視または断続的業務に従事する者とは、その勤務を本来の任務とする者を指すことはいうまでもないが、必ずしもこれのみに限定して解釈すべきものではなく他の業務を本務とする者が附随的に監視または断続的業務に従事する場合も過度の労働にならないことを条件として、これに含めて規定しているものと解するのが相当である。従って同法施行規則第二十三条の規定は、右同法第四十一条第三号に基きその細則を定めたものであるから、もとより有効であって、右規定が労働基準法第三十二条憲法第二十七条第二項に違反して無効であるとの原告等の主張は当らないというべきである。しかして被告所管の県立諸学校の校長が所属の教職員を宿日直勤務に従事させることにつき、労働基準法第四十一条第三号、同法施行規則第二十三条地方公務員法第五十八条の規定により、熊本県人事委員会の許可を受けていることは当事者間に争のないところであるから、校長が教職員に対して宿日直勤務を命ずることは何ら労働基準法に違反していないというべきである。
 ところで教員の本来の任務が児童生徒の教育にあることはいうまでもなく、且つ教員を他の諸用務から解放して教育活動に専従せしめるのが望ましいことは勿論であって、学校教育法においても学校に事務員をおくと規定して職務の分担を図っていることが認められるけれども、これらの規定及びその他、教育基本法等に照らしても、制度上、教員が本務以外の附随的業務に従事すべき業務を一切免除されているとまでは到底認められないものであって、特に宿日直の如く、他に本来の職務を有する者によっても行いうる仕事を、教職員の附随的職務と定めて、これに割当てるか、あるいは別に警備員を雇用して専らこれを行わしめることとするかは、学校の規模、予算上の裏付け、その他学校運営に関する諸般の事情に基き、教育行政の責任者たる教育委員会の措置に一任されているものというべきである。
 (中 略)
 しかして成立に争のない乙第十二号証、及び証人A、同B、原告X1、同X2の各供述を綜合すると、C教組において、昭和二十八年頃より、教員に対して宿日直を命令する法的根拠が問題とされるようになったが、これに対して被告教育委員会は、地方教育行政の組織及び運営に関する法律第三十三条に基き、昭和三十二年十一月九日、熊本県立学校管理規則を制定し、その第十八条において、宿日直は職員の中から校長が命令する旨規定して、教員に宿日直をなすべき義務があることを明確にしたことが認められるばかりでなく、右宿日直に関する手当は、県の負担とされて、教員の宿日直勤務に対して支給されていることを認めるに十分であるから、被告教育委員会所管の県立諸学校の教員は、校長より命令された宿日直勤務に従事すべき義務あることが明らかである。