全 情 報

ID番号 01315
事件名 雇用関係存続確認等請求事件
いわゆる事件名 東洋ガラス事件
争点
事案概要  休憩時間中に職場において、川崎市営交通料金値上げ反対の署名を同僚に依頼したことを理由として解雇された従業員が、従業員としての地位確認、賃金支払を請求した事例。(請求認容)
参照法条 労働基準法34条3項,89条1項3号
日本国憲法14条,19条
体系項目 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 自由利用
裁判年月日 1972年8月29日
裁判所名 横浜地川崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 258 
裁判結果 認容
出典 労働判例161号37頁
審級関係
評釈論文 萩沢清彦・ジュリスト555号140頁
判決理由  使用者は、元来労働者に休憩時間を自由に利用させなければならない(労働基準法第三四条)ものであるから、その間における労働者の行動につき職場の秩序保持のためこれに制限を加えるのはやむを得ないとしても、それは必要の限度内に止めるべきであることは当然である。使用者が職場の秩序保持の名をかりていたずらに休憩時間中の従業員の行動に制限を加えることは許されないし仮りに従業員がその休憩時間中に反秩序的行動に出たとしても、右休憩時間自由利用の原則を尊重し、実害の有無等諸般の事情を適正に評価して対処すべきである。
 原告の前記認定にかかる本件署名活動は、右活動当時の状況につき前記認定した事実および弁論の全趣旨によって認められる工場内に常時作業が行われていて、しかもそれが一貫した流れ作業によって行われていることに照らせば、職場の秩序保持に違反したものと認められる。しかしながら、署名活動の態様、それに要した時間、署名を求められた者の作業への影響、とりわけ原告の本件署名活動による実害の有無等前記認定にかかる諸事実を勘案すれば、原告の本件署名活動は職場の秩序保持に違反したとはいえ、その程度は比較的軽微と認めざるを得ない。
 右認定して来たところにしたがえば、被告の原告に対する本件解雇は、たとえそれが通常解雇であり、前記認定のとおり被告において職場規律の定立に努力中の折柄であることを考慮しても、あまりにも苛酷な処置といわざるを得ず、到底被告が主張する「やむを得ない会社の都合によるとき」に該当するとは認め難い。
 したがって、被告の原告に対する本件解雇は、解雇権の行使として相当とは認められず無効というほかはない。