全 情 報

ID番号 01320
事件名 出勤停止処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 日本アルミ建材工業事件
争点
事案概要  休憩時間中、会社施設内で選挙ビラ等配布した行為が労働協約の企業内政治活動禁止規定に違反するとして出勤停止処分を受けた従業員らが、右協約規定は憲法二一条、労基法三四条三項に違反し、また右処分は労基法三条違反ないし懲戒権濫用にあたりそれぞれ無効であるとして右処分の無効確認等求めた事例。(請求棄却)
参照法条 労働基準法34条3項,89条1項9号
体系項目 休憩(民事) / 休憩の自由利用 / 自由利用
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動
裁判年月日 1983年2月15日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ワ) 1275 
昭和50年 (ワ) 1360 
裁判結果 棄却(控訴)
出典 労働民例集34巻1号73頁/タイムズ497号147頁/労経速報1148号3頁/労働判例408号55頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔休憩―休憩の自由利用―自由利用〕
 労働者が休憩時間を自由に利用できるといっても、それが企業施設内でされる場合には、企業秩序、規律維持の必要からされる制約に服すると解されるところ、休憩時間中の政治活動であっても、それが従業員間の政治的対立を生じさせ、ひいてはその後における他の従業員の職務遂行を妨げるおそれの否定できないこと前記のとおりであるから、休憩時間中にされるものといえども社内における政治活動については、組合が会社に事前に了解を求め、会社がこれを認めた場合にのみこれが許されるとすることは、休憩時間の自由利用に対する合理的な制約というべきであり、したがって、その旨を定めた本件労働協約一八条が労働基準法三四条三項に違反するものとは解されない。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―政治活動〕
 この点につき、原告両名は、本件第一処分がされるまでも昼の休憩時間中、原告両名がその参加している「A労働者後援会」の会員に「赤旗」を配布したり選挙運動を公然と行ったりしていたが、被告からも組合からもこれをとがめられることはなかったと主張するのであるが、仮に右事実が認められるとしても、被告が原告両名の右各行為を知りながら本件労働協約一八条を問題にせず、これを放任又は黙認していたと認めるに足りる適確な証拠はない。
 また、原告両名は、本件第一処分によって原告両名の政治活動の自由が奪われたことになるのであるから、その受ける不利益は極めて重大であると主張するのであるが、本件労働協約一八条の定める政治的活動に対する制約が合理性を有するものであることは前記のとおりであるだけでなく、労働時間中又は社内における政治的活動の一般的禁止は、政治活動の自由の内容自体に対する制約ではなく、その行使の一態様について加えられるに過ぎないものであるから、これによる原告両名の政治活動の自由の制約が不合理なものであるとは解されない。よって、その余についてみるまでもなく、本件第一処分が被告の懲戒権の濫用によるものであるとは認められない。