ID番号 | : | 01335 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東亜紡織事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 年休取得の真の理由が作文教育全国協議会への参加であったが、会社が繁忙であったため縁談についての相談であるとして、年休取得により右協議会に出席した者に対し、会社は懲戒解雇に付したところ、解雇無効確認等の請求がなされた事例。(無効確認) |
参照法条 | : | 労働基準法39条 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休権の法的性質 年休(民事) / 時季変更権 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 年休利用の自由 |
裁判年月日 | : | 1958年4月10日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和30年 (ワ) 1372 |
裁判結果 | : | 一部認容 一部棄却 |
出典 | : | 労働民例集9巻2号207頁/時報149号23頁/タイムズ80号91頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 花見忠・ジュリスト160号58頁/季刊労働法29号74頁/法学新報65巻7号79頁/民商法雑誌37巻4号46頁/労働経済旬報381号20頁/労働経済判例速報9巻29号15頁 |
判決理由 | : | 〔年休―年休権の法的性質〕 ところで労働基準法第三十九条は労働力の維持培養をはかる為休日以外に年間一定の日数の休日をば労働者の希望する時期に与え而もその実効を保持する為之を有給とすることを使用者に命ずるものであって所謂年次有給休暇請求権はその始期と終期の決定を労働者に与える形成権と解するのが相当である、蓋し、之を単に請求権と解するときは使用者が後記の変更権を行使し得る場合を除き労働者の有給休暇の申出を承認乃至許可しない場合は使用者については労働基準法第百十九条の罰則の適用があるのみで労働者は使用者に対して労務提供義務を制限せしめる不作為請求訴訟を提起せざるを得ない結果となり最低の労働条件としての労働力の維持培養を目的とした制度の実効を期し得ないこととなるからである。従って有給休暇の請求をするにはその日数の枠内で単にその始期と終期とを明示して申出れば足り有給休暇を必要とする事由の如きは何等具申するを要しないし使用者亦その事由如何により有給休暇の申出を左右し得ない。 〔年休―時季変更権〕 そして多数の従業員の職場が分化され専門の技術を要する分業が有機的に結合し組織づけられている近代的企業にあっては従業員の或者が何等かの事由によりその職場で労務の提供をなし得ない事態が生ずるときは之に替る従業員をその職場に配置することは事業が正常に運営されている限り経営の常に配慮すべきことであり又かかる代行員の配置による作業の成果に対する多少の差異も亦考慮に入れておくべきものであって、ここに云う有給休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合とはその企業の規模有給休暇請求権者の職場に於ける配置その担当する作業の内容性質、作業の繁閑、代行者の配置の難易、時季を同じくして有給休暇を請求する者の人数等諸般の事情を考慮して制度の趣旨に反しないよう合理的に決すべきものであり現在企業に於ける慣行として実施されているとしても単に繁忙であるとの事由を以て時季変更権があるとすることは正当でない。 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―年休利用の自由〕 尤も労働者の有給休暇の申出に対し使用者は請求された時季に之を与えることが事業の正常な運営を妨げる場合は之が時期を変更し得る権利が与えられており使用者に右の変更権が存する場合にあっても之が発動を為すべきか否かを有給休暇請求権者の有給休暇を必要とする事由如何にかからせることは使用者の企業指揮権の効果として認めるを妨げるものではない。然しながらこのことは使用者の時季変更権を有する場合を広く解し変更権を発動すべきか否かの裁量の範囲を拡大して解釈することを意味するものではない。若し使用者の時季変更権行使の裁量を広く認めるに於ては事実上労働者はその求める時季に有給休暇を請求し得ない結果となる虞も生じ又使用者が休暇後の生産の向上を意図して与える恩恵的制度とは異り国家が労働条件に介入しその最低基準を法定しようとするこの制度の本質的趣旨に副わないからである。 |