全 情 報

ID番号 01352
事件名 賃金支払等仮処分申請事件
いわゆる事件名 ネッスル日本事件
争点
事案概要  組合専従期間満了により復職した労働者に対し使用者がなした年次有給休暇期間中の賃金の控除につき、労働協約は専従者は復職の際勤務の中断がなかった場合と同等の年休権を有すると定めているとして、右賃金の支払及び年休日数の確認を求めた仮処分の事例。(認容)
参照法条 労働基準法39条1項,2項
体系項目 年休(民事) / 年休の成立要件 / 出勤率
裁判年月日 1980年5月6日
裁判所名 神戸地
裁判形式 決定
事件番号 昭和55年 (ヨ) 46 
裁判結果 認容
出典 労働判例341号51頁/労経速報1061号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  労働協約一一条が、専従者の復職後の地位、権利等につき「会社は専従者の復職の際、勤務の中断が全くなかった場合と同等の水準の地位、賃金及び有給休暇の権利を保証する」と規定していることは前記のとおりであり、同条の「勤務の中断が全くなかった場合」の意味について、債権者は、年休権の一要件である出勤率(日数)に関しては「正常に出勤した場合」の趣旨に解すべきである旨主張し、これに対して債務者会社は、債権者主張の趣旨は含まず、単に「勤続年数が継続している場合」を意味するにすぎない旨主張する。しかし、右規定の意味内容は、その文言自体からは必らずしも明らかでないといわざるをえず、従って、右協約条項締結の経緯、他の協約条項との関連、その運用の実情等を総合考察して協約当事者たる組合及び債務者会社の意思を解釈し、決定しなければならない。
 (中 略)
 一一条は、右一〇条を受けて、組合専従者の復職後の地位等に関しては、協約その他により休職に本来伴うべき不利益処遇を行わない趣旨に基づいて規定されたものであって、同条にいう「勤務の中断が全くなかった場合」は、「正常に出勤した場合」の意味を含み、従って、年休権発生の一要件である出勤率(日数)の関係では、専従期間を前記協約四七条で定める年休日数削減の対象としないことをその内容とするものと解するのが相当である。