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ID番号 01376
事件名 給与並びに慰謝料等請求控訴事件
いわゆる事件名 徳島県職員労働組合事件
争点
事案概要  県の出先機関職員が本庁における時間内職場大会に参加するため、年休指定したことが同盟罷業にあたるか否かが争われた事例。(否定)
参照法条 労働基準法39条1項,2項,4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 年休利用の自由
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加
裁判年月日 1975年12月25日
裁判所名 高松高
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (行コ) 3 
昭和50年 (行コ) 7 
裁判結果 棄却 附帯控訴棄却(上告)
出典 時報809号94頁/タイムズ334号221頁
審級関係 上告審/01416/最高二小/昭53.12. 8/昭和51年(行ツ)28号
評釈論文 毛塚勝利・労働判例243号14頁
判決理由  〔年休―時季変更権、年休の自由利用(利用目的)―年休利用の自由〕
 年次休暇は、労基法三九条一・二項の要件を充足することによって法律上当然に労働者に生ずる権利であり、同条三項により、労働者がその有する休暇日数の範囲内で具体的な休暇の始期と終期とを特定して右の時季指定をしたときは、客観的に同条三項但書所定の事由が存し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権を行使しない限り、右の指定によって年次休暇が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解すべきであるから(最高裁判所昭和四一年(オ)第八四八号・同四八年三月二日第二小法廷判決、民集二七巻二号一九一頁参照)、労働者から年次休暇の時季指定がなされた際に、当該労働者の所属する事業場以外の事業場で争議が行われていたからといって、客観的に同条三項但書所定の事由が存在し、かつ、これを理由として使用者が時季変更権を行使しない限り、年次休暇の成立を妨げられるものではなく、また、前記の如く、年次休暇をどのように利用するかは使用者の干渉を許さない労働者の自由であるから、他の事業場の争議行為に参加するために年次休暇を利用する目的であるとしても、右年次休暇により、当該労働者の所属する事業場の事業の正常な運営が阻害されるものでない限り、使用者には、その時季変更権はないものというべきである。
 (中 略)
 同一使用者の事業場が数個ある場合において、年次休暇の時季指定をした当該労働者の所属する事業場以外の他の事業場の労働者が同盟罷業を行っているとしても、年次休暇の時季指定をした当該労働者の所属する事業場の労働者が同盟罷業を行っていない場合には、他の事業場の同盟罷業のため、同盟罷業を行っていない事業場の労働者の労務の提供を受けられないような特段の事情のない限り、当該労働者の労働義務は存在するものであるから、当該労働者について年次休暇の成立する余地があるといわなければならない。そして争議行為がいわゆる拠点斗争の形態をとり、年次休暇の時季指定を行った労働者が、自己の所属する事業場以外の事業場の拠点斗争に参加した場合であっても、当該労働者の所属する労働者の事業場の事業の正常な運営が阻害される事実が客観的に存在し、かつ、使用者がこれを理由にして時季変更権を行使しない限り、年次休暇は有効に成立するものというべきである。
 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―年休利用の自由〕
 年次休暇権の行使についても、内在的な制約があり、権利の濫用は許さるべきでないことは、控訴人主張の通りである。しかしながら、年次休暇における休暇の利用目的は、労基法の関知しないところであり、休暇をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきであるから(最高裁判所・昭和四一年(オ)第一四二〇号・同四八年三月二日第二小法廷判決、民集二七巻二号二一〇頁参照)、労働者が年次休暇を、肉体的精神的労働を要する他の労働(例えば、自宅の農作業、家事、その他臨時の社会的、文化的活動)等、社会通念上は労働者の身心の休息にはならないことに使用したからといって、その年次休暇権の行使が違法無効となるものではない。そして、このことは、争議行為が禁止されている地方公務員が職員組合の指令に基づき、同一使用者(地方公共団体)の他の事業場における争議行為に参加しこれを支援するために年次休暇を使用した場合であっても、それが当該労働者の所属する同一事業場の一斉休暇斗争に利用されたものでない限り、差異はないものと解すべきである。けだし、地方公務員については争議行為は禁止されているけれども、地方公務員法五八条三項の規定に照らし、地方公務員にも労基法三九条の適用があるし、また、元来、労基法三九条但書の「事業の正常な運営を妨げる」か否かの判断は、当該労働者の所属する事業場を基準として決すべきであって(前掲最高裁判所判決参照)、他の事業場の争議行為に参加しても、それが当然には当該労働者の所属する事業場の正常な業務の運営を妨げることにはならないからである。したがって、年次休暇が、当該労働者の所属する事業場の一斉休暇斗争等の争議行為に使用された場合は格別、それ以外の他の事業場の争議行為に参加する目的で使用されたこと等、その使用目的をとらえて、その権利行使が違法であるとか、或は、権利の濫用になるとはいい得ないというべきである。