ID番号 | : | 01385 |
事件名 | : | 行政処分取消等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 千葉中郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 年次有給休暇の時季変更に従わず欠勤したとして郵便局長がなした懲戒戒告処分につき、右時季変更の意思表示はなく、あるいは、無効であるとして、右処分の取消を求めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休権の法的性質 年休(民事) / 時季変更権 |
裁判年月日 | : | 1979年10月17日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (行ウ) 9 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労働民例集30巻5号969頁/時報961号124頁/労働判例331号32頁/訟務月報26巻1号128頁 |
審級関係 | : | 上告審/03015/最高一小/昭62. 2.19/昭和58年(行ツ)81号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休―年休権の法的性質〕 年休権は、労基法第三九条第一、二項の要件を充足することによって法律上当然に労働者に生ずる権利であって、同条第三項により労働者がその有する休暇日数の範囲内で具体的な休暇の始期と終期とを特定して右の時季指定をしたときは、客観的に同条第三項但書所定の事由が存在し、かつこれを理由として使用者が時季変更権の行使をしない限り、右指定によって年休が成立し、当該労働日における就労義務が消滅するものと解すべきである。 (中 略) 原告が本件年休の申請をした当時被告は職員の年休申請に対し承認又は不承認という態度で臨んでいたことが認められるが、年休権を前記1のように労基法第三九条第一、二項の要件を充足することによって法律上当然に労働者に生ずる権利と解する以上年休の成立要件として、労働者の「休暇の請求」やこれに対する使用者の「承認」の観念を容れる余地はないが、その場合に使用者側のなす「承認」ないしは繁忙を理由とする「不承認」は、法律上は使用者による時季変更権の不行使または行使の意思表示にほかならないと解すべきである。 〔年休―時季変更権〕 年休申請が権利の濫用であると認められるような特段の事情の存する場合を除きその欠務による業務支障が認められなければ、右申請に対する時季変更権の行使は許されないものと解するほかない。そして、右にいう業務支障とは、当該事業場における業務の正常な運営が全体として阻害されることをいうものと解すべきであり、それは、年休制度の趣旨に反しないように、かつ単なる業務処理量の多寡という個別的物理的観察にとどまることなく、当該事業場の日常的業務運営の実態に即して合理的に判断されなければならない。 (三)既に認定したところを総合すると、被告は自ら業務支障の目安として欠務許容人員を設定しながら、先ず管理者主催の訓練参加者を枠外として欠務することを許容し、更に突発的申請であっても申請理由によっては欠務を許容し、これら欠務者の担当業務の全部又は一部は他の勤務者により処理され、不結束郵便物が残ってもそれは翌日中に処理されるというのが郵便課業務の実態であるということができるのである。一方原告の本件年休申請は被告側の認識の有無は別として組合活動に利用する目的でありその申請も一一月二五日二六日分については同月一四日、一二月九日分については同月四日と比較的早期になされており、しかもその期間も三日にとどまり、その時期も年末最繁忙期の始まる一二月一〇日以前であること等に照らせば年休権行使が社会通念上著しく不相当なものとまでは認めがたく、いずれも当日の未処理郵便物は翌日までに処理されているのであり、かかる事実関係と前記郵便課における業務運営の実態を対比すれば、被告が原告の本件年休申請に対し業務支障を理由として時季変更権を行使したことは客観的相当性を欠くものとしてその効力を生じないものといわなければならない。 |