ID番号 | : | 01387 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 新潟鉄道郵便局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 鉄道郵便車に乗車し郵便物の区分、積込み等に従事する郵政職員の年休申請につき、服務差し繰りが困難であるとして時季変更権が行使されたにもかかわらず欠務したことを理由になされた戒告処分の効力が争われた事例。(労働者側敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 |
裁判年月日 | : | 1981年3月30日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (行コ) 35 |
裁判結果 | : | 取消(上告) |
出典 | : | 労働民例集32巻2号167頁/労働判例365号87頁/訟務月報27巻6号1150頁 |
審級関係 | : | 一審/01382/新潟地/昭52. 5.17/昭和46年(行ウ)11号 |
評釈論文 | : | 根本真・公企労研究49号109頁/野川忍・ジュリスト762号134頁 |
判決理由 | : | 乗務員は定員を欠いて運行される場合には、未処理の発生を防止すべく、定員を欠かない場合よりもよく共助共援し作業能率の向上に努力するものとの前提に立って、控訴人が、年休付与により定員を欠く便が生ずるときでも、敢て年休を付与することは、その立場上困難である。即ち新鉄局は定員算出に当たり、標準作業速度を九パーセント高めても無理はないとしては数整理を行っているところ、定員三、四名の便が一名を欠いて運行されれば、乗務した者は、取扱郵便物の数量が、右定員算出の前提となった数量よりも著しく少い等の特別の事情のない限り、標準作業速度を九パーセント以上高めなければ、所要の作業を完了できない筋合であって、控訴人が乗務員にかような能率を期待することは相当でないからである。 本件「直秋下り便」「同上り便」とも、被控訴人の欠乗にもかゝわらず、「未処理」および「一般事故」発生の報告はなかったのであるから、真にかような事故がなかったとすれば、本件年休付与が事業の正常な運営を妨げる旨の控訴人の事前の判断は、生じた結果と異るといわざるを得ない。しかし右事情の判断の当否の事後審査に当っては、右判断当時の客観的情況に照らして合理的に予測される事実に準拠すべきものであって、事後に発生した結果に基づくべきものではない。 このような見地からすれば、昭和四八年ころ以降年休付与等により欠員のまゝ運行される便が、従前より増加したにもかゝわらず、「未処理」が従前よりも増加しておらず、又乗務員から欠乗による多忙等の苦情が出されていないとの事実があったとしても、本件当時である昭和四四年と昭和四八年以降との、従業員の年齢構成、健康状態、労働環境、作業能率、労使関係、職場秩序、当該便の定員、取り扱われる郵便物の数量と構成等について詳細に比較検討しうるような資料が十分でない本件において、昭和四八年以降の状況を基礎として、本件の前記二便について事業の正常な運営を妨げる旨の判断の当否を論ずることは適当ではない。 このようにして、本件年休付与により、本件「直秋下り便」および「同上り便」は各定員一名を欠いて運行される結果、取扱郵便物の「未処理」又は「一般事故」の発生を見る可能性があり、これを否定するに足りるような特別事情は認められないのみならず、本件当時は年末年始につぐいわゆる夏期繁忙期に当り、本件「直秋上り便」は前記のように繁忙便であって、当時一名のみ欠乗した便でも「未処理」の発生を見た場合が多かったことに鑑みると、右可能性はますます増大するというべきである。前記(二)ないし(三)の事実によれば、右「未処理」等発生の結果、その事後処理のため、職員は多大の労力を費し、取扱郵便物の遅配を招くことが明らかであって、郵便事業の使命に照らせば、かような事態は事業の正常な運営とは到底いえない。従って本件年休付与につき労基法三九条三項但書所定の事由が存在するといわざるを得ない。 |