ID番号 | : | 01392 |
事件名 | : | 懲戒処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 横手統制電話中継所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 成田空港反対闘争に参加する目的での年休請求であるとして時季変更権を行使されたが当日欠勤した電電公社職員が、当日分の賃金カットと戒告処分を受けたのに対し、右時季変更権の行使は行使の要件を欠く違法のものであるとして右処分の無効確認等求めた事例。(請求一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項,89条1項9号 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 時季変更権 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 違法行為への参加 |
裁判年月日 | : | 1983年6月27日 |
裁判所名 | : | 秋田地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ワ) 440 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | 労働判例415号51頁 |
審級関係 | : | 上告審/03095/最高三小/昭62. 9.22/昭和60年(オ)989号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休―時季変更権〕 右所論に従えば、最低配置人員配置時における勤務予定者による年休時季指定は、公社事業の性質上、当該職員の欠勤による欠務という唯その一事で事業上の支障が生じるおそれが強いものと一応推測される結果、勤務割を変更するか否かの決定が、A所長の裁量に委ねられているとすると、勤務割変更の有無によって時季変更権行使の要否が決まり、ひいては年休を取得し得るか否かが決定されるという関係にあることからみて、A所長の一存で年休取得の可否が決まってしまうというようなことになりかねないが、このような結論は相当とは思われない。すなわち、右結論は、労基法三九条が、労働者に対して年休時季指定権を権利として付与し、労働者の希望する時季に年休を取得せしめて、年休の効果的な利用を可能ならしめ、他方これによって生ずる使用者との間の利害の調整については、事業の正常な運営を妨げる客観的事情の存する場合に限って時季変更権の行使を許容するという方法により、その実現を図ろうとした趣旨、目的に照らし、必らずしもよくこれに適合するものとはいえない。また、交替勤務者に限って特に前々日の勤務終了時までに年休の時季指定をしなければならないと定める公社就業規則三九条、年次有給休暇に関する協約の覚書(五二中覚第四号六)四項の趣旨、目的、すなわち、使用者に対し、時季変更権を行使するか否かを検討する時間的余裕を与えるとともに、勤務割を変更して代替勤務者を確保する機会を与えて、できる限り時季変更権の行使を不要ならしめ、もって労働者の年休取得を容易ならしめようとしたことにもそぐわないのである。 そのうえ、最低配置人員配置時における勤務予定者が年休の時季指定をした場合、整備係長らにおいて代替勤務者を探し出し、A所長がその者の勤務割変更を命じて欠務を補充して事業上の支障を解消し、時季変更権の行使をしていないという横手統話中における職場慣行にも反することになる。従って、このような場合における勤務割変更について、これが大幅にA所長の自由な裁量に委ねられたものということはできず、殊に第二、一、2、(二)の(1)ないし(7)のように代替勤務者を容易に確保し得たであろう客観的事情の存する本件のような場合にあっては、A所長において、代替勤務者を探し出したうえで勤務割の変更を命じ、横手統話中における事業上の支障の解消に努めるべきであったというべきである。 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―違法行為への参加〕 被告の主張するように、原告において、反社会的行為に出るために、本件年休時季指定権を行使したことを認めるに足る的確な証拠はなく、また、他にその行使の態様や方式につき、一般労働者として、あるいは、公社職員として要請される信義に反したことを窺わせる事情についても、これを認めるに足る証拠はない。従って、右行使をして、権利の濫用にあたるとの被告の抗弁3の主張は理由がない。 |