ID番号 | : | 01410 |
事件名 | : | 解雇有効確認請求、反訴請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 幸袋工作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 賃上げ交渉をめぐる組合の闘争戦術転換に反対の組合執行委員、青年部員が、年休取得による集団欠勤を指導したとして、就業規則に基づいて懲戒解雇されたが、会社がこの解雇有効確認を請求し、組合執行委員らが反訴請求した事例。(請求認容、反訴請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法39条4項,89条1項9号 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 一斉休暇闘争・スト参加 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1975年4月24日 |
裁判所名 | : | 福岡地飯塚支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 140 昭和48年 (ワ) 14 |
裁判結果 | : | 請求認容、反訴棄却 |
出典 | : | 労働判例230号59頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 加藤俊平・労働判例231号10頁/手塚和彰・ジュリスト618号162頁 |
判決理由 | : | 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―一斉休暇闘争〕 しかしながら前記のとおり、同日一〇六名の欠勤者があり、そのうち被告両名を含め九六名が年次休暇を申請しているが、右申請は各従業員が独自の考えでそれぞれ手続をして休暇をとったところ、たまたま同日多数の欠勤者が重って異常な集団欠勤現象が生じたとみるべきものではなく、原告会社の業務の正常な運営の阻害を目的として、一斉に休暇届を提出して職場を放棄離脱したものであって、その実質は年次休暇に名をかりた同盟罷業にほかならず、従ってその形式いかんにかかわらず本来の年次休暇権の行使とはいえず(最高裁第二小法廷昭和四八年三月二日判決)、しかも、右争議行為は、組合の統制のもとに行われたものではなく、組合全体の意思を無視し(青年部の意思決定もない)、被告両名らが計画、指導し青年部所属の組合員を中心とし、これに同調した一部一般組合員によってなされたいわゆる山猫ストであって、合法性を欠き民事上の免責を受け得ないものである。 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―違法争議行為・組合活動〕 青年部は文化・運動等のサークル活動を主たる活動内容とする組合内の下部組織でそれ自体独立した労働組合たるの実体をそなえず、独自の団体交渉権も争議権もないことが認められ、従って青年部独自で争議行為を行うことを決議したり、争議行為を行うよう青年部所属の組合員に指示する権能のないことは明らかである。しかしながら前示のとおり組合と原告会社との間に賃上等をめぐる団体交渉が重ねられたが容易に妥結する見込みがなく、時限ストが繰返えされていた中で、青年部執行委員等の青年部の組織を通じ、青年部員及びその他の組合員に、青年部が決議し指令したごとき言動をもって一斉に年次休暇をとるよう指示したり、あるいは、これに協力するよう求めれば争議指令権能の有無に拘らず、青年部員やその他の組合員の意思決定に重大な影響を及ぼすことは明らかであり、前示のとおり多数の欠勤者が出たのは、被告両名らの前示行為に基づくものであることは明らかである。 (中 略) 前示のとおり被告両名は、会社に打撃を与える目的をもって前記のとおり一斉休暇ストをする旨通報ないし協力を要請し、多数の欠勤者を生ぜしめ、その結果会社の正常な生産を著しく阻害したのであって、右行為が右条項に該当することは明らかであり、その手段、態様及び結果に照らすと、被告両名の責任は重大で、原告が懲戒解雇したのはやむをえぬ措置というべく情状を無視し裁量の範囲を著しく逸脱した処分とはいい難い。 |