全 情 報

ID番号 01425
事件名 懲戒処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 弘前電報電話局事件
争点
事案概要  年休の時季指定を行った電々公社職員が、成田空港反対闘争参加に関わる年休の付与は慎重に行うようにとの指示に従った課長により時季変更権を行使されたが、当日欠勤したため戒告処分と賃金カットを受けたのに対し、右年休取得は適法であったとして戒告処分の無効確認、未払賃金の支払等求めた事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法39条4項
体系項目 年休(民事) / 時季変更権
年休(民事) / 年休の自由利用(利用目的) / 違法行為への参加
裁判年月日 1983年3月8日
裁判所名 青森地
裁判形式 判決
事件番号 昭和53年 (ワ) 399 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 労働判例405号11頁/訟務月報29巻9号1662頁
審級関係 上告審/03069/最高二小/昭62. 7.10/昭和59年(オ)618号
評釈論文
判決理由  〔年休―時季変更権〕
 ところで、事業の正常な運営を妨げる事情は、企業の規模、年休請求者の職場における配置、その担当する作業の性質、内容、作業の繁閑、代替勤務者の配置の難易、労働慣行等の諸事情を勘案してその存否を決すべきものと解されるところ、前記一の事実によると、原告が本件年休の時季として指定した昭和五三年九月一七日については、予めAが原告の代替勤務者として勤務することに予定されていたこと、B課長がAの代替勤務する意思を翻意させることなく、右予定どおり勤務割を変更したうえ、赤城を原告の代替勤務に就かせていた場合には同日の最低配置人員を確保することができ、原告が欠勤する場合に生ずる業務上の支障は容易に解消されたものと認められる。そうすると、昭和五三年九月一七日については、機械課市外担当の業務の正常な運営が妨げられる事情があったものとは認められないから、B課長の本件年休の時季指定に対する時季変更権の行使は無効である(仮に、業務の正常な運営が妨げられる事情が存在したとしても、前記一の事実によると、業務上の支障は被告(B課長)自らが作り出したものと認められるから、それを理由に時季変更権を行使することは権利の濫用として許されないものというべきである。)。
 〔年休―年休の自由利用(利用目的)―違法行為への参加〕
 しかし、原告が反社会的な行為をするために本件年休の時季指定をしたことを認めるに足りる証拠はない。むしろ、前記一の事実によると、原告は昭和五三年九月一七日に開催された成田空港反対集会に参加するために本件年休の時季指定をなしたこと、原告は同日右集会に参加したが、いわゆる現地闘争に参加して違法行為を行うなどの反社会的な行動はとらなかったこと、B課長は原告が右集会に参加するおそれがあると考え、右参加を阻止するため時季変更権を行使して原告の年休の取得を拒否したものであって、原告が右集会に参加したうえ確定的に違法行為に及ぶとまでは考えていなかったことが認められる。
 さらに、年休をどのように利用するかは、使用者の干渉を許さない労働者の自由であると解すべきであるから(最判昭和四八年三月二日民集二七巻二号二一〇頁参照)、もし、被告において、原告が年休を利用して反社会的な行動に及ぶおそれがあると判断した場合には、被告としては、まず、原告にそのような反社会的な行動をしないように説得に努めるべきであり、仮に、原告が右説得に従わず、その取得した年休を利用して反社会的な行動に及んだならば、そのことを理由に後日懲戒処分をなしうるにすぎないというべきであって、それ以上に原告が年休を取得することを否定できないものといわなければならない。
 そうすると、被告職員の職務の特殊性等被告が主張する諸事情を考慮しても、原告の本件年休の時季指定が権利の濫用であるとは到底認め難く、他にこれを認めるに足りる証拠はない。従って、被告の右主張は理由がない。