判決理由 |
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債権者は、右協定が労働基準法に違反し無効であると主張し、前記三日を加え、債権者の有給休暇の残日数は当時四日であった旨主張するけれども、およそ、労働基準法に基き与えられるべき有給休暇は労働者の意思によって自由にその時季を選択しうるのであるが、時季の制約も労働者の自由意思が十分尊重され、且つ労働者にとって積極的に利益となるような場合ならば、有給休暇の時季を制約する協定も必ずしも無効と解すべきでないところ、前掲各証拠によれば、もともと右協定は従来の慣行に従い、労働組合の要請によって締結するに至ったこと、その前提として、労働組合の執行部が先ず夏期休暇について、前記のごとき内容の事項を提案し、これを総会に次ぐ労働組合の議決機関である代議員会にはかり、一部修正のうえ、代議員会の承認をえた正規の手続によって、労働組合としての意思が決定され、これにより労働組合が債務者に申入れて協定が成立するに至ったことを認めることができ、これは有給休暇の時季につき、労働者の意思によって決定するという基本原則の上に立脚されたものというべく、かつ協定の意図するところが、前掲各証拠によれば、労働者の保健衛生という妥当な目的であればなおさらのこと、無効と解すべき合理的根拠がないものといわなければならない。従って、右協定により、従業員の有給休暇のうち三日は特別な事情が認められない限り、その請求する時季について全従業員を拘束するものであるが、債権者が明示的に他の時季を有給休暇として請求したことを認めることができない本件においては、債権者の右の主張は理由がない。 |