ID番号 | : | 01441 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 沖縄米軍基地事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「年次休暇の権利は、満一暦年につき、八時間勤務二〇日の割合で取得するものとする。一暦年中に常用従業員として採用された従業員は、常用従業員として採用された月及びその暦年の残りの各月につき、一二分の二〇の割合で与えられるものとする。」という基本労務契約の規定の適用を受ける在日米軍基地の常用作業員で、かつ年次途中に退職することが予定されていた者が、退職が予定される月までの期間につき、一二分の二〇を越える年次休暇を請求した事例。(一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法39条1項,2項 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 労働契約の終了と年休 |
裁判年月日 | : | 1977年8月10日 |
裁判所名 | : | 那覇地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ワ) 391 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | 時報869号104頁/訟務月報23巻9号1555頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01442/福岡高那覇支/昭53.12.19/昭和52年(ネ)57号 |
評釈論文 | : | 秋田成就・判例評論231号31頁/村下博・季刊労働法107号130頁 |
判決理由 | : | 契約の文言からは、年次有給休暇の日数が、常用従業員として在籍することが予定される期間に関心を払った上で定められていると見られること、従前の取扱いにおいても、年度途中で退職した常用従業員に対し、二〇日間の年次有給休暇の行使が容認されていたものと認めるに足る証拠はないこと、契約の一方の当事者である米国の契約事務担当者は、右常用従業員に対しては、二〇日間の年次有給休暇が与えられるものではなく、残りの在籍期間に対応して算出される日数の年次有給休暇が与えられるものという見解をほぼ一貫して有していること、雇傭主との関係が終了することが予定されている場合、それが終了しない場合と同一の期間の年次有給休暇を与えることを雇傭主に対し義務づけることは、労働基準法三九条に基づく場合を除き、必ずしも、当事者間の衡平に資するゆえんではないこと、年度途中で退職が予定される者に与えられるべき年次有給休暇については、基本労務契約には明文の定めがなく、したがって、その日数は、右契約中の関係する諸規定の文言、従前の年次有給休暇の取扱い、契約当事者である米国及び日本国の契約事務担当者の意思、労働基準法及び年次有給休暇制度の趣旨、当事者間の衡平等諸般の事情を考慮して、決定すべきものであることなどにかんがみると、年度途中に退職することが予定されている常用従業員に対し与えられるべき年次有給休暇の日数は、基本労務契約第七章A節2中段の規定に準じ、一月から、退職することを予定される月までの期間につき、一二分の二〇の割合で与えられるものと解するのが相当である。 そしてこのように解すると、年度途中に常用従業員として採用された者も年度途中に退職することが予定されている常用従業員も、在籍する期間に応じて年次有給休暇が与えられることとなり、前年から常用従業員として在籍していたということのほか、何ら十分な理由もなく、他の労働条件についても、格別取扱上の差異もないのに、年度途中に採用された者との間に、いずれも満一年は在籍することができない者でありながら、与えられるべき年次有給休暇の日数に大きな差が生じ得るという不合理が除かれることになるのである。 |