全 情 報

ID番号 01454
事件名 未払賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 エヌ・ビー・シー工業事件
争点
事案概要  生理休暇取得日数を欠勤日数に算入して精皆勤手当を使用者が支給したことにつき、算入せずに計算した右手当との差額の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法68条,11条,3章
体系項目 女性労働者(民事) / 生理日の休暇(生理休暇)
裁判年月日 1980年3月19日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和49年 (ネ) 1309 
裁判結果 棄却(上告)
出典 タイムズ412号106頁/労経速報1044号3頁/労働判例338号13頁
審級関係 上告審/01455/最高三小/昭60. 7.16/昭和55年(オ)626号
評釈論文
判決理由  労基法六七条は、同条所定の要件を充足する者が所定労働日に生休を請求したとき、使用者はその者を就業させてはならない旨を規定しているが、その法意は、女子の健康保持のためその生理時の就業を制限し、これによる労務不提供に対し債務不履行の責を免れさせることに尽きるのであって、さらに進んでこの労務不提供にもかかわらず賃金の支払いを使用者に命じ、あるいは何らかの関係において生休取得日を出勤したものとみなすべきことをも含むものではないと解するのを相当とする。
 (中 略)
 労基法は全体として生休取得日につき賃金を保障していないし、又賃金支払を禁じているわけでもないから、その選択を民法及び当事者の合意に委ねていると解すべきである。
 民法によれば、女子労働者が生休取得により労務を提供しないのは、生理現象という労働者使用者双方の責に帰すべからざる事由を主因とする履行不能にあたると考えられるから、当該女子労働者は同法五三六条一項によりその反対給付すなわち労務提供の対価たる賃金を受ける権利を有しないし、また同条は反対の合意を禁ずるものではないと解するのを相当とする。
 かように生休取得日につき賃金を支払うべきか否かをもっぱら当事者の合意に任すのが労基法及び民法の建前である。
 (中 略)
 本件手当(精皆金手当)は女子組合員が一か月間を通じ出勤不足日数を三日以内にとどめるような態様で労務を提供したとき、その対価として出勤不足日数による区分に応じて異る金額をもって支払われる金員であるから、労基法にいう賃金であり民法五三六条一項にいう反対給付にあたる。
 (中 略)
 本件手当創設及びその金額倍増の目的は、不適法な生休と自己都合欠勤とを抑制することにより、出勤率の向上を図るにあり、生休一般の不行使を奨励する趣旨にあるといえないことは前述のとおりである。
 (中 略)
 生休は女子労働者の権利ではあるが、労基法が有給を保障し又は無給を禁止しているわけではないから、たまたま生休取得者に本件手当を支給せず又はこれを減額する結果となり、生休取得を抑制するとの事態が生じたとしても、そのことから直ちにかような不支給等の措置を違法であるとは解し得ない。