ID番号 | : | 01510 |
事件名 | : | 勤務時間確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 北九州市病院局事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務時間を延長する市病院の就業規則の改訂につき、労働者に一方的に不利益を課すものとして、従前の勤務時間の確認を求めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条,93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立 |
裁判年月日 | : | 1980年4月15日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (行ウ) 42 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集31巻2号510頁/タイムズ427号120頁/労経速報1055号13頁/労働判例341号68頁/訟務月報26巻8号1383頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 私企業において就業規則が労使関係を規律する効力を有するのは、労働条件は当該就業規則によるとの事業たる慣習の成立によって法的規範性が認められることによるものであり、その効力の基準が右のようなものであるが故に、私企業において使用者が就業規則の作成または変更によって労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、労働条件の集合的処理の見地から合理性がない限り許されないのである(最高裁昭和四三年一二月二五日判決、集二二巻一三号三、四五九頁参照)。 一方、前記のとおりその勤務関係が公法上のものであることは地方公営企業の職員も一般地方公務員と異らないが、その勤務条件については現行法は、一般地方公務員の場合は条例で定めるものとしているのに対し(地公法二四条六項)、地方公営企業職員については前記1記載の地公企法および地公労法の各関係規定からみて法は、給与の種類および基準のみは条例で定めることを要するものとし、その他の勤務条件については条例等に反しない限り管理者の定める就業規程若しくは管理者と労働組合との間で締結される労働協約により規律させようとしていると解せられるのであるが、法が管理者に右のような大幅な勤務条件の決定権を委ねているのは、管理者の自主性を強化することにより地方公営企業の能率的、合理的経営を図ろうとしているものと思料される。このように、管理者の定める就業規程は、私企業における就業規則と異り地公企法により法的規範としての効力を与えられているものというべきであるから、条例、労働協約および労基法の定めに反しない限り就業規程の制定、改廃により勤務条件の決定およびその変更を行うことができるものというべきである。もっとも、前記のように管理者の定める就業規程については、私企業における就業規則と同様に労基法八九条ないし九三条が適用されることとなっているのであるが、右労基法の就業規則に関する規定は就業規則の内容の合理性を保障するため国が後見的立場から監督的規制を定めているものであり、地公企法は地方公営企業の管理者の定める就業規程についても国が後見的立場からなす右規制の必要性があるものとして、管理者の定める就業規程につき労基法の適用を受けさせることとしたに過ぎないものと解せられるから、労基法の前記法条の適用があるからといって地方公営企業の管理者の定める就業規程が私企業における就業規則とその法的性質を同じくすることになるわけのものではないというべきである。以上のとおりであるから、前記二で認定のような必要性があるものとして同認定のような経緯で制定された新規程の勤務時間の定めは有効なものというべきである。 |