全 情 報

ID番号 01519
事件名 未払賃金等支払請求事件
いわゆる事件名 タケダシステム事件
争点
事案概要  生理休暇につき年間二四日を有給とする旨の就業規則が生理休暇の取得につき存する濫用防止のためとして月二日を限度に基本給一日分の六八パーセント補償へと変更され、これに従い賃金の減額を受けた女子従業員らが、就業規則の一方的な不利益変更は許されないとして減額分の賃金の支払を求めた事例。(一部破棄差戻)
参照法条 労働基準法89条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 生理休暇
裁判年月日 1983年11月25日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (オ) 379 
昭和55年 (オ) 969 
裁判結果 破棄差戻
出典 時報1101号114頁/タイムズ515号108頁/労経速報1171号3頁/労働判例418号21頁/金融商事705号33頁/裁判集民140号505頁
審級関係 控訴審/01511/東京高/昭54.12.20/昭和51年(ネ)2749号
評釈論文 下井隆史・季刊実務民事法6号236頁/下井隆史・昭和58年度重要判例解説〔ジュリスト815号〕207頁/桑原昌宏ほか・時の法令1208号30頁/手塚和彰・ジュリスト808号63頁/小西国友・日本労働法学会誌64号114頁/新谷真人・季刊労働法131号159頁/本多淳亮・判例評論305号54頁/林修三・時の法令1202号53頁
判決理由  本件就業規則の変更が被上告人らにとって不利益なものであるにしても、右変更が合理的なものであれば、被上告人らにおいて、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されないというべきである。そして、右変更が合理的なものであるか否かを判断するに当たっては、変更の内容及び必要性の両面からの考察が要求され、右変更により従業員の被る不利益の程度、右変更との関連の下に行われた賃金の改善状況のほか、上告人主張のように、旧規定の下において有給生理休暇の取得について濫用があり、社内規律の保持及び従業員の公平な処遇のため右変更が必要であったか否かを検討し、更には労働組合との交渉の経過、他の従業員の対応、関連会社の取扱い、我が国社会における生理休暇制度の一般的状況等の諸事情を総合勘案する必要がある。しかるに、原審が長期的に実質賃金の低下を生ずるような就業規則の変更を一方的に行うことはそもそも許されないとの見解の下に、本件就業規則の変更が合理的なものであるか否かについて触れることなく、右変更は被上告人らに対し効力を生じないと速断したのは、就業規則に関する法令の解釈適用を誤ったものといわざるを得ず、その違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、論旨は理由があり、原判決中上告人の敗訴部分は破棄を免れない。