ID番号 | : | 01520 |
事件名 | : | 退職金請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 大曲市農協事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 農協の合併に伴い職員の待遇が統一される中で、就業規則、退職給与規程が改訂され、従前よりも退職金が減額された農協職員らが、右改訂は、一方的な不利益変更にあたり、右改訂前から雇用されている職員にはその同意がないから改訂の効力は及ばないとして改訂前の規定による退職金の支払を求めた事件の控訴審。(控訴認容、労働者勝訴) |
参照法条 | : | 労働基準法89条,93条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 退職金 |
裁判年月日 | : | 1984年11月28日 |
裁判所名 | : | 仙台高秋田支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和57年 (ネ) 76 |
裁判結果 | : | 取消 認容(上告) |
出典 | : | 時報1143号147頁/労働判例450号70頁/労経速報1224号3頁 |
審級関係 | : | 上告審/03924/最高三小/昭63. 2.16/昭和60年(オ)104号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | ところで、労働者の同意がないのに使用者が就業規則及びこれと一体をなす諸規程を一方的に変更することによって、労働者の既得権を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課することは、原則として許されないと解すべきであるが、労働条件の統一的かつ画一的処理のため、労働者の受ける不利益の程度、労使双方の事情を総合的に検討して、それが労使関係に合理的なものである限り、個々の労働者の同意を得ることなく変更された就業規則及びこれと一体をなす諸規程を一律に適用することができると解するのが相当である。 (中 略) 以上認定した事実をもとに考えると、新規程への変更により、花館農協の職員であった者については勤続年数が二二年以上の場合の支給倍率が低減し、とくに勤続年数が二五年以上の場合の低減値が大巾であり、従って控訴人らの前記定年退職時点までの勤続年数に照らすと控訴人らが右変更によって受ける不利益は極めて大である。 (中 略) なるほど、合併によって控訴人らの給与は是正され、控訴人らは被控訴人の就業規則及びこれと一体をなす諸規程の制定に基づき、定年の延長、定休日、特別休暇、前記各種手当につき本人死亡の場合の弔慰金をのぞき利益に変更を受けているものではあるが、これらは前記不利益に対応する見返りないし代償としてなされたものではなく、合併当事組合の職員が合併に伴い、当時の社会情勢、経済情勢に対応して制定された被控訴人の前記就業規則及びこれと一体をなす諸規程並びに給与の是正措置等によって共通に受けた利益ということができるのであり、これらの点に鑑みると、使用者である被控訴人にとっては労働条件の統一的画一的処理という意味では新規程を控訴人ら花館農協の職員であった者についても適用することが必要かつ合理的であること及び控訴人らが合併により前記利益を得ていることを考慮に入れても、なお、控訴人らに前記不利益をもたらす新規程への変更に合理性があると認めることはできない。 |