ID番号 | : | 01529 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | トヨタ自動車工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 協議条項違反の就業規則の改正、意見聴取義務違反の就業規則の改正につき、その効力停止の仮処分申請が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法90条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 意見聴取 就業規則(民事) / 就業規則の変更と協議条項 |
裁判年月日 | : | 1950年6月24日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和25年 (ヨ) 230 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集1巻4号670頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則―意見聴取〕 被申請人会社は前述のように申請人分会の意見提出期間を一応同年五月二十九日までと指定したものの、必ずしも右期間の厳守を要求した訳ではなく右期間の経過後においても出来れば分会と協議をなし、就業規則変更の具体的理由を説明し且つ組合の確定的意見を聴取する意思であったことを窺知するに難くないのである。したがって前記のごとく、同年五月二十九日(右団体交渉の前日)被申請人会社より岡崎労働基準監督署に対し就業規則変更の届出(分会の意見書と見られるべきものは何等添付されていない)が提出されたことは、恐らくなんらかの手続上の過誤にもとづくものと考えられるのであり、未だ申請人分会の意見を聴く段階に達せずしてなされた不適式の届出と称するの外はない。しかして被申請人会社のかような処置は労働基準法の前記法条に違反すること明かといえるから、本件就業規則の変更はこの点から見ても効力を生じないと解せねばならない。 〔就業規則―就業規則の変更と協議条項〕 そこで右就業規則第八十二条に見るように、就業規則それ自体の中にその改廃の手続につき制限を設け、会社の独断にては改廃をなさず分会の同意を得て行うと規定した場合、右規定は一体如何なる意義を有するか又会社が右規定に違背し分会の同意を得ずして改廃をしたとき如何なる効力を生ずるか、就業規則がもともと労働基準法の命ずるところにより使用者の義務としてその一方的行為により制定するものなる関係上多少の疑問あるを免れない。しかしながら、右のように就業規則はその本来の性質上使用者の側で一方的に制定するものであるとしても、一旦それが制定せられた以上、一個の法的規範として関係者に対し一般的妥当性を有し、企業の構成員はすべてその拘束を受けるのであり、制定者たる使用者といえどその例外をなすものではないと解するを相当とする。したがって前記のように、就業規則中に被申請人会社は申請人分会の同意を得て就業規則を改廃すると規定した以上、右は被申請人会社に対しても当然拘束力を有し会社は分会の同意を得ずして就業規則の変更をなすことを得ず、もし敢えてこれをなすもその効力を生ぜざるものと為さざるを得ない。 |