全 情 報

ID番号 01533
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東洋精機事件
争点
事案概要  就業規則にもとづく人員整理につき、労働者側の意見聴取をしていないこと、労働者に周知させていない就業規則によるもので効力を有しないとの主張に対し、これを認めて、地位保全の仮処分申請を認容した事例。
参照法条 労働基準法90条1項
体系項目 就業規則(民事) / 意見聴取
就業規則(民事) / 就業規則の周知
裁判年月日 1953年8月10日
裁判所名 神戸地尼崎支
裁判形式 決定
事件番号 昭和28年 (ヨ) 129 
裁判結果
出典 労働民例集4巻4号361頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔就業規則―意見聴取〕
 果して然らば法第九十条第一項が労働者過半数の意見を聴くことを要すと規定することは、之を少くとも就業規則の効力発生要件と解さなければならぬ。
 茲に意見を聴くとは、労働者過半数の意見が十分に陳述された後、之が十分に尊重されたと云う事蹟が存せることである。意見が十分に陳述されたと云うことは十分に陳述する機会と時間的余裕が与えられたと云うことであり、事実上意見が陳述されたか否かは問わないものである。
 〔就業規則―就業規則の周知〕
 更に本件就業規則は労働者に之を周知させていない。就業規則が元来使用者の一方的に制定し得るものであればある程、労働者は其成立課程に関与していないから之を諒知するところがないので、之が効力発生については是非とも之を周知させることを必要とする、然らざれば「依らしむべし、知らしむべからず」とする専制政治である。
 而して周知せしめることは場所的にも時間的にも、通常の状態に於て周知せしめ得たと一般的に期待される状況下に置かなければならぬ。
 然るに被申請人は七月二十二日午後三時食堂に貼出したと謂うのである。左すれば夕食を摂らない労働者は翌二十三日昼食時でなければ、之を知る由がない。
 然るに疎甲第一号の解雇通知に依ると七月十日から有効となった就業規則に依ると記載してある、右の如く、改正就業規則は昭和二十八年七月二十四日正午以後でないと、効力を発生しないから会社の解雇通知は効力を発生してない就業規則に依拠したものであるから、此の点からしても本件解雇は有効なりと断ずることは出来ない。