ID番号 | : | 01562 |
事件名 | : | 退職金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 常盤基礎事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営合理化による人員整理のために解雇された原告が被告会社の退職金規程に従い退職金の支払を請求した事例で、被告会社が右規程は形式的なものにすぎず法的規範としての効力を有しないとの抗弁をした事例(認容)。 |
参照法条 | : | 労働基準法90条 労働基準法106条 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 意見聴取 就業規則(民事) / 就業規則の周知 |
裁判年月日 | : | 1986年3月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和60年 (ワ) 8342 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例472号42頁/労経速報1260号26頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-意見聴取〕 前項の事実関係によると、本件就業規則等は、それによって被告会社の従業員の労働条件等を規律することを直接の目的として作成されたものではなく、その取扱いにおいても必ずしも従業員の労働条件等を定める規範としては利用されてこなかった。また、その作成手続においても、労働者の過半数を代表する者の意見を聴いたとは認めがたく、問題がないとはいえない。 しかし、作成の目的やその実際の取扱いが右のようなものであっても、本件就業規則等は、被告会社の内部資料として内部的に保管されていただけでなく、法規に則り労働基準監督署長に届け出られていたのであり、特に、原告が雇用されるころまでには、被告会社は、常時一〇人以上の労働者を使用するようになり、就業規則を作成すべき法的義務を負うようになったにもかかわらず、本件就業規則等を改正することも、新たに就業規則を作成することもなかったのであるから、原告が本件就業規則等に則った給付を求める以上、被告会社は、その作成の目的や実際の取扱いなどを理由に、本件就業規則等が規範的効力を有しない旨主張することは許されないと解すべきである。 〔就業規則-就業規則の周知〕 また、作成手続の点については、法が就業規則の作成に当たって労働者の過半数を代表する者の意見を聴くことを求めているのは労働者の権利を保護する趣旨に基づくものであるから、労働者である原告が本件就業規則等に則った給付を求める以上、被告会社は右作成手続上の問題点を理由に右給付の履行を拒むことはできない。被告は、本件就業規則等は従業員らに周知されていなかったとして、その規範としての効力がないと主張するが、周知性の有無はともかくとして、就業規則について従業員への周知が要求される趣旨もまた作成手続の点と同様、労働者の権利を保護することにあるから、使用者である被告会社はこの点を理由に本件就業規則等に規範的効力がないと主張することはできない。 |