全 情 報

ID番号 01577
事件名 災害補償金請求事件
いわゆる事件名 日本トラック事件
争点
事案概要  労働協約と就業規則に定める休業補償追加給付金の支給基準額を引き下げる協約が締結されたが就業規則の改正手続はとられなかったところ、協約改訂後に業務災害にあった原告が就業規則所定の旧基準による給付金の支払を求めた事例(右のほかに求めていた一時金の支払請求の一部についてのみ認容)。
参照法条 労働基準法89条
労働基準法92条
労働基準法93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則と協約
裁判年月日 1985年1月18日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (ワ) 554 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 時報1157号155頁/タイムズ557号232頁/労働判例457号77頁/労経速報1233号3頁
審級関係 控訴審/名古屋高/昭60.11.27/昭和60年(ネ)43号
評釈論文 諏訪康雄・判例評論323〔判例時報1170〕60~63頁1986年1月/名古道功・昭和60年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊862〕216~218頁1986年6月
判決理由  2 もっとも、被告の右主張は、労働協約の改訂により、右就業規則も改訂されたと同様の効力を認められるべきものであるとの趣旨にも解されるもので検討するに、被告と組合との間には休業補償追加給付に関し、従来から就業規則八六条二項と同一内容の労働協約が締結されていたこと、同協約は前記のとおり昭和四九年六月六日及び同五〇年七月四日に改訂されたが、これら協約改訂はいずれも休業補償追加給付金日額を引き下げるものであって、組合員中休業補償追加給付を受けるべき者の労働条件を切り下げる労働協約の締結であることが明らかである。
 ところで、労働協約のいわゆる規範的効力(労組法一六条)が右のような労働条件を切り下げる改訂労働協約についても生ずるかについては、そのような労働協約を無効とする規定が存しないこと、労組法一六条の趣旨は、労働組合の団結と統制力、集団的規制力を尊重することにより労働者の労働条件の統一的引き上げを図ったものと解されることに照らし、改訂労働協約が極めて不合理であるとか、特定の労働者を不利益に取り扱うことを意図して締結されたなど、明らかに労組法、労基法の精神に反する特段の事情がないかぎり、これを積極的に解するほかはない。
 (中 略)
 4 以上によれば、休業補償追加給付に関する昭和四九年六月六日から昭和五五年四月一七日に至る一連の労働協約の締結、及び同五四年五月一七日の就業規則の変更には、特に原告を差別的に取扱う意図はもとより、その他格別合理性を欠く事情も認められない。なお、右就業規則の変更については組合の同意を得ていることになる。
 したがって、原告は右改訂労働協約及び変更就業規則の適用を免れることができないというべきであるから、変更前の就業規則による原告の休業補償追加給付金の請求は理由がない。