ID番号 | : | 01585 |
事件名 | : | 仮処分命令申請控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本ナショナル金銭登録機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 休憩時間中事業場内の食堂で従業員にアカハタ号外を配布したことが事業場内での政治活動を禁止した就業規則に違反するとして懲戒解雇された労組役員が、右懲戒解雇は不当労働行為に当り無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴認容、労働者勝訴) |
参照法条 | : | 労働基準法89条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 政治活動 |
裁判年月日 | : | 1969年3月3日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ネ) 2433 |
裁判結果 | : | 取消 |
出典 | : | 労働民例集20巻2号227頁/時報548号27頁/東高民時報20巻3号51頁/タイムズ232号295頁 |
審級関係 | : | 一審/01314/東京地/昭42.10.25/昭和39年(ヨ)2125号 |
評釈論文 | : | 横井芳弘・労働法の判例〔ジュリスト増刊〕96頁/花見忠・判例タイムズ235号75頁/花見忠・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕126頁/窪田隼人・法律時報41巻13号138頁/山本吉人・月刊労働問題133号114頁/水野勝・東洋法学13巻3・4合併号97頁/川口実・法学研究〔慶応大学〕42巻10号100頁/中山和久・判例評論129号25頁/東城守一・労働経済旬報747号30頁/萩沢清彦・労働経済判例速報672・673合併号44頁/平岡一実・労働法令通信22巻9号12頁/籾井常喜・ジュリスト421号107頁 |
判決理由 | : | これを本件のように事業場内における従業員の政治活動についてみると、事業場内という限定がある点で政治活動一般とは趣を異にするけれども、官公庁等と異り性質上政治的中立を要請されることのない一般の企業体においては、企業経営が支障なく行なわれるかぎり、前項の基準に準拠する制限は考えられない。しかしこれを全く無制限に放任するときは、時に経営秩序が乱され、企業活動に支障が生ずることがありうるから、かようなびん乱や支障、換言すれば就業の規律、能率を妨げるものにかぎっては、事業場内の政治活動を禁止する合理的理由があるといえる。そして政治活動は往々にして対立的契機を包蔵し、激情的色彩を帯び勝ちなものであるといいうるけれども、単に抽象的にそのようなおそれがあるとの一事をもって事業場内における政治活動を禁止することはできず、それが禁止されうるのは、現実かつ具体的に前記経営秩序びん乱等の結果を招来する行為に限定されなければならない。例えば労働時間中の政治活動(この場合は労働契約の不履行が生ずるから当然である。)、喧噪であったり心身に拘束を及ぼしたりして他の労働者の就業に悪影響を与えるもの、顧客が出入する店頭におけるもの、その他具体的状況下で前記のような結果を招来するもの等である。 (中 略) したがって本件文書配付行為自体によって被控訴人会社の経営秩序が乱されたり、生産能率に悪影響を与えたりするものでないことは明白であり、またその内容が共産党の主義主張にもとづくものであって、受取った各人の心理や政治上の思想に何らか影響を与えたとしても(わずか一枚の号外では大した影響も考えられないが)、それが自他の休息、疲労回復を妨げ、その他被控訴人会社の生産に直接影響するものでないことはいうまでもない。ほかに本件において右文書配付行為が何らか経営秩序を乱し、生産に影響を与えたことの疎明はない。そうすれば、控訴人が右行為をしたことは前記禁止される政治活動をしたことにならないというべきである。 (中 略) したがって控訴人は就業規則違反に該当する行為をしたことにならず、同規則第一一三条第二号に該当しない。 |