全 情 報

ID番号 01599
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 新横浜タクシー事件
争点
事案概要  企業組合の組合員が、企業組合の就業規則に基づき停年退職を通告され就労を拒否されたので、業務に従事することを妨害する行為を行わず賃金の仮払を命ずる仮処分を求めた事例。(申請一部認容)
参照法条 労働基準法89条,93条
体系項目 就業規則(民事) / 就業規則の法的性質・意義・就業規則の成立
裁判年月日 1965年10月6日
裁判所名 横浜地
裁判形式 決定
事件番号 昭和40年 (ヨ) 459 
裁判結果
出典 労働民例集16巻5号685頁
審級関係
評釈論文 花見忠・ジュリスト388号188頁
判決理由  企業組合に従業員の労働関係を律する就業規則が制定されているとすると、組合員であると否とにかかわらず、その従業員はこれに従うべきものであるが、もしその就業規則中に前記組合員の権利を制限するような規定をもっていたとすれば、定款または規約が正当の理由があるとしてこれを許容するのでない限り、その効力を認めるべきでないことはいうまでもない。就業規則はたといそれが全従業員との協議にもとづき制定せられたものであったとしても、その本質上使用者が一方的に定めるものであって、企業組合についていえばその業務執行機関がこれを制定するから、組合員固有の権利に影響を及ぼすような定をすることができるわけはないのである。
 (中 略)
 そこで本件についてみるに、疎明によると被申請組合には組合員たると非組合員たるとを問わず組合事業に常時従事する者に関する基本的事項につき、組合と組合事業従事者の代表との協議で定めた就業規則が存在し、申請人は右就業規則に基づき被申請組合との間で組合事業に常時従事する旨の黙示の契約を結んでいること、右就業規則には前記停年退職の規定があることが認められるけれども、前判示のとおり右契約は組合員たる資格により生じる申請人の組合事業従事権にもとづくものであり、申請人と被申請組合との事業従事関係が右就業規則によって律せられるものとしても、同就業規則中停年退職の規定は右契約を終了させるにとどまらず、組合員の事業従事権をその同意を得ずに制限することとなる関係上、組合員を対象とする限りではその効力を生じないものであること明らかであり、被申請組合において、組合員の事業従事権をこのように制限し、または就業規則でその制限を定めることを許容する定款、規約が存在するとの反対主張がない以上、被申請組合は申請人が従来行っていた自動車運転の業務に従事することを拒むことはできないといわねばならない。