ID番号 | : | 01608 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 近江絹糸紡績事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 争議行為中の寄宿舎、社宅、社員寮の利用制限、寄宿舎に居住する女子の従業員に対する通信、面会等に対する制約等に対し、妨害禁止等の仮処分申請が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法10章 |
体系項目 | : | 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 寄宿舎生活の自由・自治・管理権 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 争議中の利用 |
裁判年月日 | : | 1954年7月10日 |
裁判所名 | : | 静岡地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和29年 (ヨ) 224 昭和29年 (ヨ) 239 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集5巻3号349頁/労経速報148・149合併号11頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔寄宿舎・社宅―寄宿舎の利用―寄宿舎生活の自由・自治・管理権〕 右寄宿舎に居住する女子の従業員については従来より、兎角通信、面会の自由が妨げられ殊に申請人らが新組合を結成せんとするや会社は極度に之を嫌忌し、女子の従業員らが之に走ることを極力阻止し外部との交通連絡を遮断せんとしたものであつて、このことと申請人ら中女子はいずれも若年者で力弱く、智慮に乏しく容易に行動の自由を束縛せられる虞あることに鑑みると、少くとも申請人ら中女子の従業員については再び寄宿舎に居住するに至った場合外部との交通及び面会の自由を会社に対し確保せしめる要あるものと認めざるを得ない。 〔寄宿舎・社宅―寄宿舎の利用―争議中の利用〕 寄宿舎、社宅、社員寮等はその性格に多少の相違はあるとしても、いずれも会社との雇傭契約に基き従業員たる地位に伴いこれを利用できるものであるから、従業員たる地位を保持している限りその使用の権限を失わないものというべく、又広義の労働条件の一部をなすものとはいえ、かの賃金のように労働の対価として供与せられるものでもないから単に争議をしているとの一事を以て従業員たる申請人らに対し宿舎の利用を拒絶することはできないものと解するを相当とする。更に又申請人らはさきに認定したように、決して宿舎の利用を放棄する意思の下に退去したものではなく、依然宿舎を利用する意思を留保しつつ、組合支部を結成し或はこれに加入するためにやむなく一時的に脱け出したものに過ぎないものであるから、これを理由として宿舎の利用を拒むことはできない。更に申請人らの前記認定の境遇に徴するとき、この宿舎を利用せしめることによって労資対等の原則に反するものとは考えられない。尚申請人らに本件宿舎を利用せしめることによって他の従業員との間に直ちに混乱が起るとの疎明もない。よって被申請人の右の主張はいずれも排斥する。しかしてこのことは寄宿舎等の附属施設及び厚生施設についても同じであると考えられる。 |