全 情 報

ID番号 01615
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 旭化成工業事件
争点
事案概要  勤務時間中および寄宿舎内で政防法反対の署名を求めたことを理由とする懲戒解雇に対し、地位保全の仮処分申請がなされた事例。(認容)
参照法条 労働基準法10章
体系項目 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 寄宿舎生活の自由・自治・管理権
裁判年月日 1963年4月10日
裁判所名 宮崎地延岡支
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ヨ) 39 
裁判結果
出典 労働民例集14巻2号514頁
審級関係
評釈論文 渡辺章・ジュリスト347号96頁
判決理由  労働基準法第九四条が寄宿舎生活の自治を保障しているのは、事業の附属寄宿舎において営まれる労働者の私生活は労働関係とは切離された個人としての自由な活動領域―つまり作業から開放された状態での作業に関係のない、労働者の個人としての生活領域―に属するものであって、本来使用者がそれに干渉したり、介入したりすることはあり得ない筈であるが、使用者の立場からすると、職場における勤労と私生活とは同一労働者の示すそれぞれの側面であり、労働者の私生活のあり方如何が直接または間接に職場における勤労に影響するところから、ややもすると寄宿舎に居住する労働者の私生活に干渉したり介入したりするので、その弊害を除去し、労働者の私生活の自由(この私生活の自由ということは憲法によっても保障されているところである)を確保することにその目的があるものと言わなければならない。
 (中 略)
 なお、寄宿舎は使用者の設置する施設であって、寄宿舎の建物、設備に対する管理権は本来使用者に属しているものであるから、この管理権―物的管理権と呼ぶことができる―に基いて、使用者がその建物、設備の利用に関し具体的に必要な規制を加えることの出来るのは当然であるが、その規制は建物の設備の維持、管理に必要な範囲を超えることは許されないと解する。そして、寄宿舎居住者の居室は個人の私宅に相当するものであるから、居室への使用者側管理者の立入りは厳格に制限さるべきであるし、また、寄宿舎における共同生活の秩序は前記のごとく本来自治的に定められるべき性質のものであり、使用者の建物、設備に対する管理権がこれに直接つながるものとは解せられない。