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ID番号 01619
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 大東マンガン事件
争点
事案概要  マンガン鉱の製錬作業に従事してきた原告らがマンガン中毒、じん肺に罹患したとして、使用者に対し債務不履行責任(予備的に不法行為責任)に基づき、又、国に対し国家賠償法一条一項に基づきそれぞれ損害賠償を請求した事例。(一部認容)
参照法条 労働基準法101条,104条
国家賠償法1条
体系項目 監督機関(民事) / 監督機関に対する申告と監督義務
裁判年月日 1982年9月30日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ワ) 4187 
裁判結果 一部認容(確定)
出典 時報1058号3頁/タイムズ479号226頁/労経速報1132号3頁/労働判例396号51頁/訟務月報29巻4号599頁
審級関係 控訴審/06315/大阪高/昭60.12.23/昭和57年(ネ)1949号
評釈論文 阿部泰隆・判例評論293号2頁/安西愈・労働法令通信35巻27号2頁/岡村親宜・日本労働法学会誌61号157頁/桑原昌宏・労働判例403号4頁/高田敏明・昭和57年行政関係判例解説640頁/上野勝・労災職業病の企業責任〔労災職業病健康管理【1】〕159頁/上野勝・労災職業病の企業責任〔労災職業病健康管理【1】〕317頁/菅野和夫・ジュリスト811号96頁/西村健一郎・ジュリスト780号119頁/西村健一郎・季刊労働法126号135頁/保原喜志夫・昭和57年度重要判例解説〔ジュリスト792号〕212頁
判決理由  3 被告国は、旧法特に労働安全衛生を目的とする行政措置は、労働災害を未然に防止するため使用者に対する取締を目的とし、労働者個々人の身体健康の保護を直接の目的とするものではなく、反射的利益を与えているにすぎないからその侵害は違法でない旨を主張するところ、旧法の労働衛生関係の条項の執行により労働者が受ける利益は所謂反射的利益ではあるが、状況次第では違法に侵害されたものとして損害賠償義務が発生することがありうる。
 4 原告ら主張の被告国の監督機関の長期間の多くの義務とその不行使につき、旧法及び労働安全衛生法において監督機関に権限が与えられているが、その行使不行使は裁量事項であって、一般的に、違法の問題は生じない。
 然し、行使の場合よりも更に慎重さが要求されるにせよ、不行使の場合においても裁量の範囲を著るしく逸脱し、著るしく合理性を欠くと言えるような特殊な場合に、不行使を続けると不作為の違法として問責されるであろう。
 但し、旧法上このような場合でも、事業者は、監督機関の監督を受けるまでもなく、少なくとも自己の事業に関する法令の規定を熟知して事業をなすべきものであって、事業者は第一の、そして究極の責任者であり、国は二次的、補足的責任を負うにすぎない。
 右の趣旨における特殊な場合を完璧に定めることは殆ど不可能と考えるが、概ね左記の各事項を充足することを要し、その余の事項は状況次第であると解する。
 甲事項 人間の生命、身体に対する危険が切迫していること。
 乙事項 監督機関において右の危険の切迫を知っているか、又は容易に知りうる場合であること。
 丙事項 監督機関においてその権限を行使すれば容易にその結果の発生を防止することができる関係にあり監督機関が権限を行使しなければ結果の発生を防止しえないという関係にあること。
 丁事項 被害者―結果の発生を前提―として監督権限の行使を要請し、期待することが、当時において、社会的に、容認される場合であること。