ID番号 | : | 01621 |
事件名 | : | 証拠保全申立事件 |
いわゆる事件名 | : | ダイハツ工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者が昇格、昇給につき差別扱いをしているとして、その較差の存在、程度を立証するため賃金台帳の提出を求めた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法108条 |
体系項目 | : | 雑則(民事) / 賃金台帳 |
裁判年月日 | : | 1979年5月31日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和53年 (モ) 14357 |
裁判結果 | : | 認容(抗告) |
出典 | : | 時報946号92頁/タイムズ388号140頁 |
審級関係 | : | 控訴審/01622/大阪高/昭54. 9. 5/昭和54年(ラ)314号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 本件賃金台帳(別紙目録(一)、(二)記載の者らに関する部分)が民訴法三一二条三号後段の文書に該るか否かにつき検討するに、右規定が証拠の偏在という状況のもとで訴訟当事者間の実質的平等、公平を回復することにより訴訟における真実の発見に資するとともに、他面、所持者に対し提出義務を課するが故にその利益を害することに鑑み、その提出すべき文書の範囲を画したものと解されることからすると、挙証者と所持者との間の法律関係に付き作成された文書とは、第一に、契約書などのように挙証者と所持者との間の法律関係それ自体を記載した文書だけでなく、その法律関係の構成要件事実の全部又は一部を記載した文書をも包含すること、第二に、当該文書が、挙証者と所持者との間の法律関係それ自体、もしくはその法律関係を裏付ける事実を明らかにすることを予定して作成されたものであることを要し、専ら所持者又は作成者の内部的な自己使用の目的で作成されたにすぎないものはこれには該らないこと、第三に、当該文書には、挙証者と所持者の双方にとって共通に関連する事項が記載されていなければならないが、所持者が単独で作成し又は挙証者と共同で作成したかを問わないものというべきである。 (中 略) 賃金台帳の記載事項は申立人主張の債務不履行又は不法行為法律関係それ自体に関するものではないけれども、申立人主張の賃金の格差の存在及びその程度は、申立人に関する賃金台帳と申立人と年令、勤続年数のほゞ同一である別紙目録(二)記載の者らに関する賃金台帳とを比較対照することにより明らかになりうることからすると、本件賃金台帳には、右の法律関係の構成要件事実の一部が記載されているものということができ、右記載事実は申立人、相手方双方にとって共通に関連する事項であり、また、賃金台帳が本来使用者の便宜のために作成されるものではあるが、他面、前述のように労使紛争の予防解決のためにも作成されるものであることからすると、本件のような差別がなされているか否かを明らかにすることをも予定して作成されるものといえるから、相手方が単独で作成するものとはいえ、本件賃金台帳は申立人と相手方との間の法律関係に付き作成された文書ということができる。 |