ID番号 | : | 01634 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 西日本鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 営業用自動車を無許可で私用のために使用したことを理由に懲戒解雇された原告が、雇用契約上の地位確認と賃金及び附加金の支払を求めた事例。(一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号,114条 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為 雑則(民事) / 附加金 |
裁判年月日 | : | 1967年3月31日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ワ) 294 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集18巻2号268頁/タイムズ206号129頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 花見忠・ジュリスト404号141頁 |
判決理由 | : | 〔雑則―附加金〕 ところで労働者の生活を休業手当の支給によって保護し、右手当の支払を附加金支払命令の制裁によって一層確実なものたらしめようとする労働基準法第一一四条の法意に徴すれば、使用者が仮処分判決に基づき仮払賃金を労働者に支払つているときは右仮払金の限度で休業手当不払についての一切の不利益を免れるものと解すべきところ、会社は前示のとおり昭和三九年三月三一日までに計八万円の仮払賃金を原告に支払つているから、同日までの附加金支払命令算定の基礎となる未払休業手当金額は四二万七、五一三円となる。 しかしながら右附加金は契約等から生ずる一般の金銭債権等と趣を異にし、裁判所の命令によつてはじめてその支払義務および支払額が決定されるものであり、裁判所は合理的な範囲内で使用者が同条第二六条に違反するに至った一切の事情を斟酌して適当にその支払を命ずるかどうかおよびその額を決定することができるものと解されるところ、前認定のとおりの原告の無許可運転実行の事実、その後のAをそそのかしての真相秘匿行為、会社とB労組間で無断運転はすべて懲戒解雇とするむねの確認書が作成されていて、本件懲戒解雇の効力につき原告と会社間に鋭い見解の対立があったこと、会社が前示仮処分判決を尊重し、昭和三八年一二月以降は毎月二万円の仮払金を遅滞なく支払っていること等の事情を綜合考慮すれば、前示未払休業手当に対する附加金支払はこれを命ずる必要を認めない。従って附加金に対する遅延損害金の支払請求も、附加金の弁済期その他の点について判断するまでもなく理由がないこととなる。 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務上の不正行為〕 被告のように自動車による旅客運送事業をその営業の重要部門とする株式会社にあっては、乗客および一般の道路通行者の生命身体の安全を守り、企業秩序の維持を計るため営業用自動車の運行管理を厳重にする必要のあることは理の当然であって、これを無許可で濫に私用に供したりする従業員に対しては厳しい懲戒を以って臨む必要のあることもまた当然に肯認されるところである。 しかしながら、無許可運転行為はその性質上飲酒運転、無免許運転等情状考慮の余地が殆んどない行為と趣を異にし、その態様、情状がきわめて多様にわたるものであり、かつ懲戒解雇が労働者の生活に及ぼす重大な不利益を考えれば、前示企業経営秩序維持の必要性と、無許可運転の情状、態様、および懲戒によって労働者の蒙る不利益の重大性その他諸般の事情を比較検討し、懲戒解雇が社会通念上労働者にとって不当に苛酷な結果となる場合には、解雇権者の主観的意図が奈辺にあったかを問わず、右懲戒解雇は解雇権の濫用としてその効力を生ずるに由ないものとなると解せねばならない。 |