全 情 報

ID番号 01707
事件名 不当労働問題存在確認請求控訴事件
いわゆる事件名 リッカーミシン事件
争点
事案概要  「会社の承認を得ないで会社内で印刷物等の撒布をなしその他社内の秩序を紊し不穏当なる言動をなした」ことを理由とする懲戒解雇に関する事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 1964年12月15日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ネ) 1031 
裁判結果 棄却
出典 時報402号68頁
審級関係
評釈論文
判決理由  (二)ところで、前認定(1)の控訴人の「進言書」配布に関する行為は、前記懲戒事由に一応該当すると認められるけれども少くとも当時控訴人の謝罪によって被控訴会社も同人に対する懲戒処分を見合わしたものであり、かつ、右事件は本件解雇時からみて約三年前の問題で当時一応解決済のものと認められるので、被控訴会社において今更これを懲戒事由として取り上げることは相当でないというべきである。
 しかしながら、前認定の(2)(3)の控訴人の文書の無断社内配布、投書その他の言動は、いずれも事実を歪曲誇張し、あるいは虚偽の事実に基いて上司を公然中傷非難し、その名誉信用を著しく毀損する虞れのある言動といわねばならない。控訴人は、被控訴会社における上司の社則違反その他の非行を匡正して社内の秩序維持をはかり、従業員の労働条件を改善する目的でした行為であると主張するが、控訴人がその主張のように被控訴会社に対しその業務通達の励行、集金人の増員等につき建設的な意見具申をなしていたとの事実を肯認するに足る証拠はなく、前掲甲第二四号証の五の供述記載中右認定に反する部分は原審証人Aの証言にてらし採用できず、かえって、前認定の別紙第二ないし第四の文書の記載内容、表現ならびにその配布投書の方法、時期などを勘案すると、控訴人の右各行為はその主張の目的を著しく逸脱したもので、これが上司を非難中傷して、その名誉信用を毀損する虞れがあるものと認められる以上、右行為が就業規則にてらし被控訴会社からその責任を問われてもやむを得ない。
 しからば、控訴人の前記(2)(3)の行為は、前記就業規則所定の「会社の承認を得ないで会社内で印刷物等の撒布をなしその他社内の秩序を紊し不穏当なる言動をなした」場合に該当すると認むべきである。