ID番号 | : | 01714 |
事件名 | : | 仮処分決定に対する異議控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 山陽電気軌道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 選挙違反により有罪判決を受けたため懲戒処分として諭旨解雇処分に付された原告が、本件解雇が懲戒権の濫用であるとして争った事例。(一審 申請認容、二審 控訴を認め申請棄却) |
参照法条 | : | 民法1条3項,627条 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行 |
裁判年月日 | : | 1965年9月13日 |
裁判所名 | : | 広島高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ネ) 117 |
裁判結果 | : | 取消 棄却 |
出典 | : | 労働民例集16巻5号638頁/時報434号53頁 |
審級関係 | : | 一審/00575/山口地下関支/昭39. 5. 8/昭和37年(モ)87号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務外非行〕 前示(一)の解雇処分は、(二)以下の懲戒方法に比較して最も程度の重い処分とされているのであり、労働者を企業内から終局的に排除する処分としての性質上からいっても、また、労働者の生活の基盤を奪ってその精神的ならびに物質的の生活面に及ぼす実際上の影響からみても、重大な処分であるから、この懲戒方法によるのは、他の懲戒方法によっては経営秩序を維持し難い如き、やむを得ない場合に限られるべきものである。 そして、右の観点から考察すれば、控訴会社の被控訴人等に対する本件諭旨解雇処分は、いささか苛酷の嫌いがないでもないが、一方、被控訴人等の前記刑事事件は選挙犯罪として悪質のものであって、控訴会社の従業員としての適格性に疑を持たしめる程度のものであり、《証拠略》によれば、右の刑事事件について控訴会社の従業員のなしたこととして各新聞に報道され、世間の注目を引いたことが疎明される。してみると、控訴会社がこれを放置すれば他の従業員に悪影響を及ぼして職場規律を乱すおそれがないとはいえないから、解雇処分をもって臨んだのも無理からぬこととも思われる。のみならず、すでに認定したところによれば、昭和三六年五月二七日行われた前示トップ会談において、支部組合側から被控訴人等に対する懲戒解雇を諭旨解雇に改めることの提案がなされ、更に、同月二九日から行われた地方労働委員会の職権斡旋に際しても、委員会側からさきのトップ会談において支部組合側のなしたのと同様の提案がなされ、同年六月六日、支部組合と控訴会社との間に成立した前示争議妥結に伴う協定において、支部組合の提案通り、被控訴人等に対する懲戒解雇が諭旨解雇に改められた経過に照らしてみると、当時、関係者の間では、被控訴人等の前示所為は少くとも諭旨解雇に値するものと考えられていたことが疏明される。 以上の各事情を綜合してみると、結局、右の諭旨解雇は、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くものとは解せられないから、有効であるといわなければならない。 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒権の限界〕 ところで、被控訴人等は、右諭旨解雇処分が控訴人の権利の濫用であって無効であると主張するが、元来、使用者が、その雇用する労働者に対して懲戒権を発動するにあたり、懲戒事由に該当する労働者に対して所定の懲戒方法のうちいずれの方法を選ぶかは、社会通念に照らし著しく妥当性を欠かない限り、使用者の自主的な裁量に委ねられているものと解するのを相当とする。そして、使用者が、その裁量の限界をいちじるしく逸脱し、その懲戒処分が苛酷不当に過ぎ、客観的に妥当性を欠くものと認められる場合には、その懲戒処分は懲戒権の濫用として無効となるものというべきである。 |