ID番号 | : | 01718 |
事件名 | : | 解雇無効等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 八戸鋼業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タイムレコーダーによる不正打刻を理由とする懲戒解雇が懲戒権の濫用とされた事例で、就業規則中に規定された労働基準監督署長の認定が懲戒解雇の有効要件か否かが争われた例。(控訴一部認容、ただし右争いについては有効要件ではないとされた。) |
参照法条 | : | 労働基準法20条,89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / タイムコーダー不正打刻 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力 |
裁判年月日 | : | 1965年2月11日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ネ) 70 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集16巻1号96頁 |
審級関係 | : | 上告審/01726/最高一小/昭42. 3. 2/昭和40年(オ)564号 |
評釈論文 | : | 園部秀信・新版労働判例百選〔別冊ジュリスト13号〕54頁/手塚和彰・ジュリスト369号144頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―タイムコーダー不正打刻〕 使用者が労働者に対し、懲戒を行うには、労働者の当該行為の性質、態様、不法の程度に応じて公平を失しないよう客観的妥当な懲戒をもって臨むべきものと解すべきである。 (中 略) 控訴人には従来、就業規則第二三条第一号ないし第七号に定める懲戒事由に類するような行為があったものと認めるに足りる証拠はなく、控訴人は、普通に勤務していたものであるところ、原審における控訴本人尋問の結果(第一、二回)によると、控訴人の本件不正打刻は、ふとしたはずみで、偶発的になされたものと認めることができるから、これをもって、にわかに最も重い懲戒解雇に値いするものということはできない。 〔解雇―労基法20条違反の解雇の効力〕 就業規則第二二条は、(中 略)。 四、懲戒解雇は労働基準監督署長の認定を受けて、予告期間を設けることなく、かつ予告手当を支給することなく即時に解雇する。 と規定し、右第二二条第四号は、就業規則第一条第二項の趣旨よりして、労働基準法第二〇条を受けて規定されたものと解されるところ、同条第三項による労働基準監督署長の認定が解雇の有効要件であるか、どうかについては別に争いのあるところであるのみならず、右就業規則には右労働基準監督署長の認定をもって解雇の有効要件とする旨の規定がなく、右就業規則第二二条自体を見ても、同条は、懲戒の種類として、その区分、態様ないし手続を定めたものであることを認めることができるから、右労働基準監督署長の認定は、解雇の要件をなすものでなく、同条第四号は、懲戒解雇が労働基準法第二〇条第一項ただし書に該当する場合に、使用者が労働基準監督署長の認定を受けることの公法上の義務を明らかにしたのにすぎないものと解すべきである。したがって、真実同条第一項ただし書に該当する事由がある場合にはその解雇は有効であるというべく、本件解雇について、労働基準監督署長の認定を受けていないとの一事をもって、直ちにこれを無効と断定することはできない。 |