ID番号 | : | 01722 |
事件名 | : | 仮処分取消控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 淀川製鋼所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地位保全の仮処分を受けた従業員に就業規則所定の懲戒事由に該当する行為があったとして会社があらためて懲戒解雇し、仮処分命令の取消(事情変更)を求めた事例。(一審 申立却下、二審 控訴棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 |
裁判年月日 | : | 1966年7月14日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和34年 (ネ) 968 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集17巻4号885頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 以上のとおり、さきに引用した原判決理由二、の(一)の(4)(5)に認定の被控訴人の行動は就業規則所定の懲戒事由に該当するものというべきであるが、前記甲第一号証の就業規則によれば、懲戒の種類は一、譴責、二、減給、三、解雇の三段階に分れており、その選択は使用者に委ねられているとはいえ、決して恣意的な選択を許すわけではなく、客観的に妥当なものでなければならないことはいうまでもないところであって、殊に懲戒処分中懲戒解雇は、従業員を企業外に排除する最も重い処分であるから、懲戒権が企業秩序維持の目的に奉仕するものであることに照し違反者をそれ以下の軽い処分に付する余地を全く認め難い場合に限って許されるものと解するのが相当である。 (中 略) 前項(イ)ないし(ハ)の事情に加えて、前記懲戒事由該当行為の具体的な内容、会社に与えた被害の程度その他諸般の情状を綜合すると、本件についてはなお情状軽減の余地が認められ、従って、会社が被控訴人を他の種類の懲戒処分に付するは格別最も重い懲戒解雇に付し、完全に反省の機会を奪い去り、企業外排除をはかったのは余りにも酷にすぎるものというべく、結局情状の判定を誤まり、ひいては就業規則の適用を誤まった無効の解雇であるというほかはない。 就業規則で解雇事由を定めている場合には、従業員の地位を保障するため使用者が解雇原因を就業規則所定の事由に限定したものと解せられる。そして就業規則につき懲戒解雇と普通解雇(予告解雇)を規定し、懲戒解雇につきその解雇事由を限定し、その解雇につき組合と協議の上これをなすべきこと等厳重な審査手続を定めている場合には、懲戒解雇に当らない従業員の非行を捉えて普通解雇に転換して解雇することは許されないものと解しなければならない。けだし、これを認めるときは懲戒解雇につき解雇原因を限定し、その解雇につき厳重な審査手続を規定した趣旨が容易に蝉脱せられ、無意味に帰するからである。 |