全 情 報

ID番号 01733
事件名 解雇無効確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 福知山電報電話局事件
争点
事案概要  通信の秘密を侵したことを理由に懲戒解雇された電話交換手が、秘密を侵した事実はない等として右解雇は無効であると主張し地位確認及び慰謝料の支払を求めた事例。(一審 棄却、控訴棄却)
参照法条 日本電信電話公社法33条1項
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反
裁判年月日 1967年12月25日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ネ) 665 
裁判結果 棄却
出典 時報514号82頁/タイムズ218号226頁/訟務月報13巻13号1645頁
審級関係 一審/04373/京都地/昭41. 4.15/昭和38年(ワ)863号
評釈論文
判決理由  日本電信電話公社法第三三条第一項によれば被控訴公社職員の懲戒処分の種類として免職、停職、減給、戒告が定められているが、一般に免職処分は被処分者をして強制的に当該特別権力関係から排除するものであって懲戒処分中いわば極刑に相当するものであることもちろんである。しかし、元来通信の秘密は憲法上保障された基本的な人権の一であって被控訴公社職員としては右秘密保持については十二分に留意すべき職務上の義務があるのであって(前掲各法規参照)、これを措いては、被控訴公社の職務は成立しないと言うも過言ではない。《証拠略》によれば、控訴人は昭和二八年一一月被控訴公社に雇用され、爾来見習社員又は正式社員(昭和三三年一〇月一日以降)として専ら電話交換業務に従事してきたもので、その間秘密保持に関する職務上の義務について相応の教育訓練を受け、その重要性については十分知悉しており、殊に昭和三〇年頃には一度控訴人が秘密を漏洩したとの投書があったのに鑑み、A電話運用課長より個人的にその真否はともかく秘密漏洩のないよう特に注意を受けたこともあるにもかかわらず、今回前記の如き所為に出たものであることが認められ、就中(3)の点はその場所柄が相客もいた美容院である点、しかも被害者Bの住所のすぐ近くであること、その話しの内容等に照らし、その義務違反の程度及び責任の程度に鑑みるときは本件懲戒処分には著しく苛酷で裁量権を濫用した違法無効のものといいうるほどの著しい不当性はないと見るのが相当である。控訴人はCこそ本件秘密漏洩の責任を主として負うべきであり控訴人はCが話さなければ問題を生じなかった立場にあるのにCは懲戒免職を免れ依願退職扱いとなっていることを考えると控訴人の免職処分は著しく不当であると主張するが、前記認定事実によればCの場合は局内漏洩であって他に義務違反の点は認められず、両名の責任の軽重は自ら明らかであるのみならず(後記証拠によれば、控訴人も当初は上司に対し自己の非を認めた上自分はともかくCは寛大に扱ってくれるよう申出ていたことが認められる)、《証拠略》によればCが依願退職したのは上司の事実上のすゝめもあって自己の非を認めた結果であり、当時被控訴公社側では控訴人に対しても事実上Cと同様のすすめをしたが控訴人において結局これに応じなかったことが認められ、右控訴人の主張は到底首肯し難い。