ID番号 | : | 01747 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日立製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 警察官に対する有形力の行使が公務執行妨害罪に当るとして逮捕、拘留(一三日間)、起訴されたが無罪となった従業員が、右事情が就業規則所定の懲戒解雇事由に当るとして懲戒解雇されたのに対し、懲戒解雇事由には当らない等として地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴棄却、労働者勝訴) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務外非行 |
裁判年月日 | : | 1969年12月25日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ネ) 494 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報588号92頁/東高民時報20巻12号278頁/タイムズ246号232頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地八王子支/昭43. 2.22/昭和41年(ヨ)498号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 被控訴人の本件における行為が右にいう「著しく所員として体面を汚したとき」でかつ「その情が重いとき」に当るか否かについてみるに、右に述べたところによれば、被控訴人が相良巡査に対してした有形力の行使は社会通念上許容される限界を越えない軽度のものであり、しかも刑事手続においてもこれを理由に無罪の判決が言渡され該判決が控訴の申立もなく確定したことを考慮に入れるときは、右有形力の行使をもってただちに著しく所員としての体面を汚ししかもその情が重いとの評価を加えることはできないといわなければならない。控訴人は、逮捕時に行われた被控訴人の抵抗、その後における被控訴人の反省のなさを指摘するが、基本たる公務執行妨害罪が成立しない以上右逮捕は理由を欠くものであるからこれに多少の抵抗をし(この点は起訴の対象となっていないことを想起すべきである。)、そのために世人の注目を集めることがあったとしても、またその後に被控訴人が反省の色を示さないことが加わっても、それだけで右懲戒解雇事由に該当するとはいえないものである。 (中 略) 被控訴人は、昭和四一年七月二〇日に逮捕され、ひきつづいて勾留され、同年八月一日勾留取消により釈放されるまでの間前後一三日にわたり身柄を拘束されていたのでその間控訴会社を欠勤したことが疎明され、〈証拠略〉によれば、懲戒解雇事由を規定した前記就業規則第五一条はその第一号において「正当な理由なく無断欠勤連続一四日以上に及んだとき」と定め、その第一四号において「その他前各号に準ずる程度の不都合な行為があったとき」と定めていることが明らかである。しかし、すでに述べたところによれば、被控訴人は犯罪として成立しない被疑事実で逮捕勾留されたために右の欠勤を余儀なくされたものということができる。右逮捕勾留は、被控訴人のいつわりの自首等その責に帰すべき事由によるものとはいえないから、右身柄拘束による欠勤は、被控訴人の責に帰しえないやむをえない事由によるものというべきである。もっとも、前記疎明事実のとおり被控訴人としても多少の有形力の行使をしているので本件逮捕勾留が全く根拠を欠くものともいえないが、右有形力の行使を違法ということはできないのであるから、この点を理由に右欠勤の責任を被控訴人に追求することは相当でない。そうだとすると、右一三日間の欠勤は正当な理由にもとづくものということができるから、前記懲戒解雇事由に当るといえないし、これに被控訴人が右欠勤について反省しないとの事実が加わっても、欠勤自体がやむをえないものであった以上そのことの故に懲戒解雇を正当となしえないというべきである。 (中 略) そうすると、本件懲戒解雇の事由としてあげられているところはいずれもこれを認めることができないから、右解雇はその効力を有しないといわなければならない。 |