全 情 報

ID番号 01749
事件名 仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 国際電電公社事件
争点
事案概要  組合による期末手当要求闘争下、就業時間中に就業場所を無断で離脱し、就業復帰命令に従わなかったことを理由に免職処分に付された電電公社職員が、右処分は不当労働行為に当り無効である等として地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(一部認容、労働者敗訴)
参照法条 公衆電気通信法110条
労働関係調整法8条,37条
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1970年4月4日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和36年 (ネ) 665 
昭和36年 (ネ) 688 
裁判結果
出典 労経速報716号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由  申請人等の懲戒事由たる本件各行為は、単に偶発的に申請人等のみがした単独行為ではなく、集団的な職場放棄の一環としてなされたものであり、しかも、申請人等が画策者、指導者であること、右職場放棄は約五〇分にわたり、そのため送信一二一通は平常時に比し平均一通につき約三六分宛の遅延を来たしたほか、電報停止の回線連絡により他局の通信業務にも支障を生じたこと、電気通信事業は送受信の迅速確実を生命とし、一分時でも所要時分の短縮をめざし努力さるべき性質のものであるこというまでもなく、かつ、公衆電気通信事業本来の使命から高度の公益性を有し、公衆電気通信法一一〇条が正当の理由なく通信の取扱いをしなかった場合の処罰規定を設け、労働関係調整法八条、三七条が抜打争議を禁止している所以もここにあること勿論であり、特に会社の取扱う国際通信は外国貿易その他国の政治経済に直接関連するだけに、その停廃による影響の重大であることは言をまたないところであり、前記乙第六一号証により真正に成立したと認める乙第五六号証の一ないし四、第五七号証の一、二、第五八号証の一ないし、三、第五九号証の一、二の一、二同号証の三ないし九及び弁論の全趣旨により窺われる如く、(中 略)。
 会社は組合から争議予告通知を受けるや、組合との間に保安協定を結び、争議行為の規模、態様の事前通告、業務停止に伴う管理者への引継ぎを確実ならしめるとともに、保安要員の差出しを受ける等、利用者損害回避のため万全の策を講じ、特に重要通信(人命保全電報、医事通報、気象電報等)は争議行為中でもその疎通を中絶させないように慎重な配慮を用いているのであるが本件の如き違法争議においては、右の如き対策を講ずる余地がなく、公益事業を営む会社として、社会的負託に背くことに対する苦痛は甚大なものがあると推察される等、諸般の事情を考慮し、原審における申請人両名の各本人尋問の結果から窺われる本件行為が申請人等の思慮の熟さない、過激な行動に走りやすい若年時代の越軌行為であること及び被申請人自認の如く、利用者から実害の苦情がなかったことを考慮に入れても、会社が経営秩序維持のため、申請人等の排除と他の従業員に対するみせしめの趣旨から、申請人等に対し懲戒解雇処分に出たことをもって、妥当性を欠いた過酷な処分であるとはいい難い。