全 情 報

ID番号 01764
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 北里研究所事件
争点
事案概要  他職員の夏期一時金着服、病院の文書破毀、経歴詐称等を理由に懲戒解雇された病院のレントゲン技師が、右解雇は協約の解雇協議約款所定の手続をふまず、また不当労働行為にあたり無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請却下)
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
裁判年月日 1971年11月25日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ヨ) 2370 
裁判結果
出典 労働判例142号10頁
審級関係
評釈論文
判決理由  申請人はA係長からその交付方を委託された同班四名に対する賞与追加支給金計一万六、〇〇〇円を着服し、しかも右金員横領を遂げるためA係長の保管に係る私文書たる領収証をかってに破棄するという暴挙に及んだもので悪質な行為というほかなく、就業規則第六九条五号にいう「刑法上の処分若しくはこれに準ずる不法行為のあったとき」に該当するものというべきである。
 また申請人の前記二の2認定の行為は、B新聞社からの技師派遣の要請があったのに乗じてレントゲン科のC主任にことわっただけで申請人がかってに長期間に亘って同新聞社に赴いて稼働し、支給された報酬を全額自己の収入としたのであるが、すでにみたとおり、本件のように長期間に亘る派遣要請は、全く異例のことであって、これによって他の職員の負担が過重となるのみならず、ひいては病■■レントゲン業務の停滞を招来しかねないものであるという事の重要性にてらして、右派遣要請に応ずるか否か、応ずる場合の人選方法はいかにすべきかなどについてはしかるべき筋において慎重に検討されるべきもので、そのために就業規則一八条所定の前記手続を経なければならないのに、申請人があえてこれに従わなかったことは就業規則の右規定に違背するものであって、軽挙妄動のそしりを免れず、(中 略)。
 そして懲戒解雇事由として就業規則六五条一号において「正当な理由なしに無断長期欠勤に及んだとき」と規定されていることが(証拠略)により認められるところ、申請人の右所為はこれに該当するものということができる。さらに申請人の前記二の3認定の行為は、上司から再三に亘ってポータブル・レントゲンを使用するよう命令されたにもかかわらず、これに従わなかったものであるがすでにふれたとおり、(中 略)。
 右使用拒否の事情にてらして右拒否について正当な事由があるものとは解し難い。そして、(証拠略)によれば、就業規則六九条二号において「職務上の指示命令に不当に従わないとき」を懲戒解雇事由と規定していることが認められるから、申請人の右所為はこれに該当するものというべきである。
 (中 略)
 以上の所為はそれぞれ就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するところ前記三の1認定のとおり、病院側から陳謝を求められたのに対し、謙虚に自己の非を反省することなくかえってこれに反抗するような言動に及ぶに至った申請人の専横ともいうべき態度を併せ考慮すると、被申請人が申請人に対して本件懲戒解雇をもって臨むに至ったのも無理からぬところであって、相当な理由があるものというべきである。