ID番号 | : | 01769 |
事件名 | : | 地位保全処分申請控訴、同附帯控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 武蔵プレス工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 八カ月間に二回にわたり他の従業員に暴行を加えたとして懲戒解雇された自動車部品組立工がその効力を争った事例。(労働者勝訴) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言 |
裁判年月日 | : | 1972年4月28日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ネ) 2824 |
裁判結果 | : | 棄却 附帯控訴棄却(確定) |
出典 | : | 時報671号86頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地八王子支/昭45.10.20/昭和43年(ヨ)529号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 一概に喧嘩、暴力行為といっても、その態様、情状は様々であるからこれに対し一律に解雇をもって臨むことはできないものというべく、ことに解雇は、譴責や減給、出勤停止、昇給停止と異なり、従業員を企業から排除し、その者に精神的、社会的、経済的に重大な不利益を与える処分であるから、喧嘩、暴力行為の態様や情状が重大であり、悪質であって、それ以下の処分に付する余地がないか、あるいは軽い処分では到底改悛の見込みがなく、ひいては職場の秩序を維持することが困難であると認められるなど、社会通念に照らし、その従業員に当該企業において労働し、生活の資を得る機会を失わしめてもやむをえない場合すなわち、これにつき客観的な妥当性がある場合にのみ許されるものと解すべきである。 (中 略) 前叙により明らかなように、被控訴人にいささか短気で手が早い欠点があり、職場において二回にもわたり暴力的行為に出たことは責められるべきことであるけれども、(1)の事件は偶発的なもので控訴会社としても情状酌量すべきものとして処分に及ばなかったものであり、(2)の事件はいわば相手方の挑発的行為に対する反撃的行為とみられるもので、かつ軽微なものであって、いずれもその態様、情状において悪質重大なものではないから、これら二つの行為をあわせてもいまだ解雇に値いするものとは認められない。 そうすれば、本件懲戒解雇は、前記就業規則の適用を誤ったものであり、解雇権の濫用として無効といわざるをえない。 |