ID番号 | : | 01772 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 嶺工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 配布したビラの内容、残業命令拒否等を理由として懲戒解雇された労働者がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1972年9月29日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ネ) 143 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報688号98頁 |
審級関係 | : | 一審/新潟地長岡支/昭46.12.17/昭和46年(ヨ)58号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 右規則は懲戒解雇事由(第七一条)とその他の懲戒事由(第七〇条)とを区別して規定しているとはいえ、一概に右懲戒解雇事由に該当するといっても、その態様、情状はさまざまであるから、これに対し一律に懲戒解雇をもって臨んだことは許されないものというべく(右第七一条も、情状によって減給にとどめることができる旨定める。)解雇がその他の処分と異り、従業員を企業から排除し、その者に精神的、社会的、経済的に重大な不利益を与えることを考えれば、情状酌量の余地はないか、あるいはそれでは改悛の見込みがなく、企業秩序の維持が困難と認められるなど、客観的に懲戒解雇を妥当とする程度に重大かつ悪質のものである場合にのみ許されるものと解するのが相当である。 (中 略) 前叙の如く控訴会社主張の懲戒解雇事由のうち残業命令拒否の事実(原判決事実摘示第二の二の(五)の1の(3))が一応懲戒解雇事由に該当するとの解釈も成り立つが、行為の態様、情状からして懲戒解雇に値するとは認め難く、他はいずれも懲戒解雇事由にすら該当しないのみならず、その多くは、懲戒解雇以外の懲戒事由にも該当するとは認め難いものであり、又上記の如く、控訴会社もそれまで殆ど不問に付してきたものであるから、これらの行為をすべて併せて総合的に判断してみても、昭和四五年一二月頃の時点において懲戒解雇に値するものということはできず、他に懲戒解雇に値する行為のあったことを認めるに足る証拠はない。 そうすれば、本件懲戒解雇は、前記就業規則の適用を誤まったものであり、懲戒権の濫用として無効といわなければならない。 |