ID番号 | : | 01786 |
事件名 | : | 雇用契約上の地位確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 五稜ハイヤー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー運転手である組合書記長が、使用者の承諾を得て半月間在籍専従として組合事務に専念した後、被告会社の労働協約の一方的破棄に対処するため、引続き専従の事務に就いたところ懲戒解雇を通告されたので、雇用契約上の地位確認を請求した事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1973年12月21日 |
裁判所名 | : | 函館地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ワ) 255 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 時報740号106頁/タイムズ311号232頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 就業規則第一八条第五号前段は、「一〇日以上無届欠勤をした者」というものであるが、他に解釈すべき特別の事情を認めうる証拠はないから、「欠勤する旨を被告に連絡せずに、一〇日以上欠勤した者」と理解するほかはない。そして、第一組合が被告に対し、あらかじめ原告を昭和四五年一月一日から第二次専従にすると申し入れていたことは当事者間に争いがないから、原告の第二次専従に伴う欠務は、被告の承諾がなかったからといって、「無届」欠勤ということはできず、第五号前段に該当しないと解するのを相当とする。 (中 略) 在籍専従とは、雇用関係を維持しながら、契約上の債務である労務を行なわず、組合業務に専ら従事することであるから、使用者は在籍専従を受忍すべき一般的業務を負わないと解すべきである。したがって、在籍専従には、使用者の個別的同意、または在籍専従を認める労働協約、あるいは確立した労使間の慣行を必要とする。それを欠く在籍専従につき、使用者は、雇用契約、就業規則の許容範囲内で、指揮命令をし、制裁を加えることができるものというべきである。 そうして、原告の第二次専従につき被告の同意がなかったことは当事者間に争いがなく、専従を認める労働協約や労使慣行の存在については、主張・立証がない。したがって、業務命令に従わない第二次専従に伴う原告の欠務は右第六号、第八号の懲戒事由に該当すると解するのを相当とする。 (中 略) 労働協約の当事者は、平和義務に違反する争議行為が行なわれる等労働協約を遵守することが著しく不当、不公平となるような特別の事情がないかぎり、労働協約上の義務を履行せず、あるいは労働協約を即時解約することは許されないと解するのを相当とする。そして、第一組合が被告に対し労働争議中であっても、前認定の労働争議では、被告の申し入れた六項目協約の不履行につき右特別の事情があったとは認め難く、その他右特別の事情を認むべき証拠はないから、被告の前記行為は、労働協約に違反する違法な行為といわざるを得ない。 原告は、第一組合の決定に従い、被告の六項目協約の不履行に対処するため、第二次専従を行なったものである。六項目協約の不履行が第一組合組合員に対し深刻な影響を及ぼしたことを考えると、原告および第一組合が、第二次専従を必要と判断したことにも無理からぬところがあるといえる。 したがって、第二次専従につき、原告に責められるべき点があるにしても、その前に被告自ら六項目を不当に破棄しておきながら原告に対し懲戒解雇をもって臨むがごときは、重きに過ぎて、著しく処分の相当性を欠き解雇権の濫用というべきである。 |